2024年4月24日(水)

古希バックパッカー海外放浪記

2016年9月4日

 ヘレンは海外旅行が好きなので海外で仕事をしたいと控えめに言った。私が「看護師資格があれば政府機関や民間NPOなど色々な組織が途上国で医療支援しているからチャンスは幾らでもあるじゃないか。海外を旅行していると途上国で医療援助に関わっている看護師さんにしばしば出会うよ」と励ますように話したら「英国では海外医療援助には特別の資格が必要。だから諦めているわ」と元気がない。

オックスフォードの看護師ヘレン、フィンランドの教師ティナと差し歯のとれたオジサン

 ヘレンはいつも7~8人のグループと一緒に行動していて、年長のフィンランドの教師ティナやメキシコ人のリーダー格のデビッドに付き添われるようにして歩いていた。いつも思い悩んでいるようで誰かに守られていないと不安という印象を受けた。何か医療過誤事故を起こしてそれがトラウマになっているのかなどと勝手に想像した。

 6月11日 雨模様の中Agesに向かって山中の林道を歩いていた。1300mくらいの高地なので凍えるような氷雨が激しく降ってくる。3時頃に空が一層暗くなり雷鳴が轟く。豪雨で視界は100mもない。林道の泥道はぬかるみ足取りが重くなる。

氷雨と雷鳴のなか12キロの林道を歩き終えて巡礼宿でボカティージョ(スペイン風サンドイッチ)に食らいつく看護師ヘレン。

 後方から数人が追いついてきた。大柄のデビッドが大声で「タカ、大丈夫か?」と怒鳴っている。デビッドはヘレンの荷物を持って彼女を先導している。そのあとをティナが続いていた。それから数時間豪雨と格闘してAgesの街に辿りついた。

 先行していた英国人のダンがバーで待っていて全員にビールをおごって無事到着を乾杯した。このとき初めてエレンの晴れ晴れとした無邪気な笑顔を見た。氷雨と雷鳴の林道を仲間に支えられて歩き通したことでエレンの魂が再生したのだと思った。


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