2024年11月25日(月)

対談

2016年6月22日

「業」だけではなく「モノ」も愛せるか

左藤:自分の技術を人に教えることはできる。でもコピーは劣化すると思うんです。

久松:よくわかります。

左藤:教えてもらって練習しながら、「でもこの作り方はダメだ」と思っていないとたぶん厳しいと思います。それは傍から見てもわからない部分ですが。

 どんな教え方をすれば劣化コピーにならないかはわからないけど、たとえばA4の紙を渡して「俺のやり方とは違う工程を作って言葉で書け」とやればいいのかも知れない。

久松:工程を作って説明してみせることまでが課題だと意識させる、ということですよね。

左藤:「俺のやり方を見て盗め」とやるのとは全然違うと思うんですよね。

久松:経営面だけで見ると、劣化コピーでもOKという判断もありえますよね。自分の手足として人を雇う覚悟があって、そうまでしても存続させるというのは、自分はやらないけど尊敬します。

 うちは同じ野菜のいろいろな品種を、少しずつ収穫期がずれるように植えて、シーズン中は切らさないようにするというやり方をしています。栽培技術としては少し難しいことなので、劣化コピーにしてしまったら立ちいかない。だから作業をできる限り工程化して、あとは各人に考える余地を残すという遠大な方法で始めたんですけど、それでもやっぱり劣化コピー化する部分がある。スタッフが楽しんでいないんですよ。作業をしているだけになっていて与えられた工程しかできなくなってきているし、その工程のレベルも高くない。

 今年はそれらを全部変えてみようと思っているんです。課題克服のために変えるのではなく、変えるために変える。売上は落ちるかも知れないけど、そうしないと僕も含めたスタッフ5人が楽しくならないような気がしているんですよね。

左藤:「働かせてください」と言ってくる人はどのくらいいるんですか?

久松:年間に50人くらいですね。採用は1人いるかどうか。会うのは15~16人くらいで、その上で農場見学に来てもらいます。売上なども全部オープンにして「こんなに儲からないよ。わかってる?」と伝えて、それでもということであれば1週間~1カ月、農場体験してもらいます。でも、それだけフィルターを通しても、萎える人は初日で萎えて帰っていくんですよ。


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