筆者「TBSのニュース23で池田先生が何て言ったかというのを読み上げると、明らかに脳に障害が起きていて…」
A氏「起こらない!」
筆者「こういう脳障害が起きている患者の共通した客観的な所見が提示されている」
A氏「ない!ですね。ぜんぜん」
筆者「今後、仮にこの実験が完成したとしても、子宮頸がんワクチンを打った少女の脳に障害が起きている話と結びつけるには飛躍がありますよね」
A氏「飛躍はあるし、リンケージ(関連)はないですよ、何もないですよ!」
筆者「子宮頸がんワクチンによってできた自己抗体が、ワクチンを打ったマウスの脳に沈着したということにもならないですよね?」
A氏「その証拠は取れていません」
池田教授がいいデータを出せと指示したのか。A氏自らがチャンピオンデータを出したのか——。A氏によれば、実験について池田教授に説明したのは昨年12月28日の1時間ほどの一度きりだという。
A氏とは、池田教授への説明に使ったという、A氏の立場を証明することになるオリジナルのスライドを見せてもらう約束で別れた。
しかし、「今日中に送ります」と言ったスライドは翌日になっても届かず、リマインドのメールを送っても返事がない。非通知でかけた電話にやっと出たが「確認して送るところです」と言ったきり、連絡がつかなくなった。最終的には、編集部からの電話を「出す必要ない」とだけ言って一方的に切ったという。
A氏は、N=1であることも、脳切片と血清の出所が別であることも、他のワクチンでも緑色に染まることも、問わなければ答えなかった。
ではなぜ「飛躍があり、リンケージもない」とA氏自らが認める実験が、計画され、実施されたのか。
そして、何百万人という人が視聴する主要ニュース番組を通じて、池田教授があのような発表を行ったのか――。
辞任でうやむや?
本誌ウェブWedgeInfinityで「利用される科学報道(後篇)」が公開された翌6月18日、池田教授の地元、長野県飯田市では、信州大学第三内科の同窓会が行われた。冒頭の挨拶で池田教授は、なぜか「お叱りを受けた」という言葉を繰り返しながら、自らの去就について述べた。