警察側は事前に逃亡計画の情報をキャッチしながら、夜間に警備を強化できず、こうした大胆な犯行を許す事態になった。
五輪期間中、政府は軍部隊も動員し、8万5000人体制で警備にあたり、治安の強化に努めるとしている。
当然、麻薬組織も封じ込める作戦を練っているが、市民は一向に良くならない状況に不安を高めている。
地下鉄の開通は開幕4日前?
(2)経済危機
英誌エコノミストは今年4月、「ブラジルの裏切り」と題字を打った号を組み、表紙にコルコバードの丘にそびえるキリスト像が「SOS」を掲げるイラストを描いた。
このコルコバードのキリスト像のイラスト表紙はシリーズ化していて、経済が絶頂期だった2009年11月号では、キリスト像が大空に向かって華々しく「テイクオフ」(離陸)する姿を描いた。
今やその頃の面影はブラジルにはない。好調を支えた輸出品である鉄鉱石や石油などの資源価格は落ち込み、経済は悪化。昨年の経済成長率はマイナス3.8%で主要国の中で最悪規模だ。さらに今年も同様のマイナス成長が予測され、1930年代以来の不況と指摘されている。
経済悪化のひずみはさまざまな面で露呈しており、失業率やインフレの増大に加え、通貨安や投資の減少を引き起こし、今後も見通しは暗い。中国に貿易の比重を高めたことが、悪化に拍車をかけたと指摘する識者は多い。
こうした状況を受け、地元自治体であるリオデジャネイロ州は税収が落ち込んで財政が逼迫しており、6月中旬に前代未聞の財政非常事態宣言を出すに至った。
経済危機は五輪の競技会場の工事やインフラ整備にも響き、大会期間中の観光客らの移送手段となる地下鉄の開通は大幅にずれ込んで、開幕4日前の8月1日になる予定。しかし、これもどうなるかわからない。