テメル氏が所属するブラジル民主運動党(PMDB)にも弁慶の泣きどころがある。それは、党の幹部たちがこぞって、国営石油会社ペトロブラスを舞台とする大規模汚職「ラバジャト事件」の捜査対象となっている点だ。
すでに暫定政権発足後、ラバジャト事件に関するスキャンダルが発覚し、3人の閣僚が辞任している。
今後も検察の起訴や国会議員が罷免に追い込まれる事態が相次ぎ、五輪を前に混迷がさらに深まる恐れがある
「ジカ熱よりデング熱の方が怖い」
(4)感染症の蔓延
南米初のリオ五輪開催が決まったとき、まさかブラジルで感染症が蔓延するとは誰も予想だにしなかっただろう。
小頭症の赤ちゃんが生まれたり、運動神経に障害をきたす「ギラン・バレー症候群」を起こすリスクを伴うジカ熱の流行については、世界保健機関(WHO)も緊急事態宣言を出し、妊婦の渡航を控えるよう警告するなど、世界中でブラジルの流行の実態が伝えられている。
中南米で流行しているジカ熱は、感染した母親が小頭症の赤ちゃんを産む危険性がある(写真:AP/アフロ)
リオ五輪の競技に限っても、ゴルフで金メダル候補だったロリー・マキロイ(英国)ら有名選手が相次いで出場を断念し、勝敗の行方を左右する事態にまで影響が出ている。
しかし、ブラジルではジカ熱と同様、ネッタイシマカやヒトスジシマカを媒体とするデング熱、チクングニア熱が過去最悪レベルで流行していることはあまり伝えられていないようだ。
留意すべきは、デング熱やチクングニア熱はジカ熱とは違って、死に至る感染病なのである。