2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2016年6月27日

 名古屋市の調査結果(速報)の結論の項「今回調査した24項目の症状について、ワクチン接種者に有意に症状のある人が多い項目は無かった」のあとには、確かに次のような文章がある。「※この結果は統計的な分析であり、個々の事例の因果関係については慎重に判断する必要がある」。

編「この※印以下、『個々の事例の因果関係は慎重に判断がいる』まであればよかった?」
市「書いてくれれば、だからといって書いていいというわけではないです……」
編「最終報告まで待って、※があればよい、ということ?」
市「最終報告じゃないし、エビデンスの1つとして結論付けるのは、やめていただきたい、と。私どもとしては、やっぱり、思いはここの思いなんですね。個別には慎重な判断が必要、という」
編「MSDの引用は、統計として差がなかったという調査もある、と正確に引用している。何がいけないのかわからない。最終報告の後なら引用していいというわけでもない、と……」
市(苦笑)
編「こんな苦しい抗議書、出したい人はいない。出せって誰かに言われてるんですか?」
市(無言)
編「折角、いい調査されたのに、何でそんな苦しい思いをされてるんですか? そういうことには普通ならないですよね。何かよほどの事情でもあるのでしょうか」
市(沈黙)

 ちなみに、市の速報の解析結果について、クレームを文書でいれたのは、薬害オンブズパーソン会議だけとのことである。

 また、子宮頸がんワクチン接種後症状を検討する厚労科学研究班の成果発表では、遺伝子型の解析の誤りとマウス実験の捏造問題が浮上する結果となっているが(参考記事はこちら)、一般的にはクローズドで行われる班研究の発表が公開となったのも被害者サイドの要望だそうだ。

 以上が、市は市立大学に「疫学的解析」を依頼しながらも、「集計結果」だけを開示するに至った流れである。これを、NHKは6月26日の夜6時のニュースで「事実上撤回」と報じた

 名古屋市は、名古屋市立大学が示した「因果関係なし」という解析結果を否定したわけではない。再解析の結果、「因果関係あり」という結果に変わったわけでも、「因果関係あり」とする別の解析があるわけでもない。「撤回」という言葉からは、名古屋市が「因果関係なし」という結論を翻したかのようなイメージを与えるが、全くそうではない。市が主体的に「因果関係なし」と主張していると受け止められると何かと困るから、解析結果に蓋をしてしまったというだけだ。クレームが来れば科学を封印する、そんな行政でよいのだろうか。

【修正履歴】
・5ページ目、"市「提訴の話が出て…」編「どうするんだと議論はあった。上層部も頭の隅にはあると思います」"と、"市"と"編"が入れ換わっておりましたので修正いたしました。(2016/6/27 13:45)

  
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