大切なのは、買収された会社の社員だけでなく、買収した会社の社員にも不安が走るのを理解することだ。例えば、両社が一体化するなかでポストの統合が行われると、1つしかないポストに誰をおくのかさえ注目される。逆に言えば、おき方次第で不安を抑えることができる。
特に両社が対等な場合ほど、人材の最適な登用が必要になる。人事は人材の出自にはこだわらず、最適な人は誰かを客観的な目線で見極める能力を持って欲しい。その結果を、経営トップと共に検証することで、経営やビジネスに貢献できる人事に変わっていくこともできる。
買収した直後に、経営トップが相手の会社でどう振る舞うか。どう相手会社の社員と話し合い、最初のメッセージを伝えるかも重要だ。
その点、日産自動車のカルロス・ゴーン社長は三菱自動車との資本提携の記者会見で「三菱の自主性をもって経営してもらう」「三菱ブランドは守る」と繰り返し発言した。買収先の味方であることを早期に打ち出し、社員の不安や動揺を抑えるポイントを踏まえた会見だった。試合巧者なゴーン氏は、必要なアクションを怠らない。
人事は買収した当日にたとえ海外であろうと、現地に飛んで相手会社の社員の心理状態をつかまなければならない。その上で経営トップと社員の話し合いの場を作り、信頼感や安心感のあるメッセージを経営者に発信してもらうべきだ。
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