サイバー空間の権力論

2016年7月8日

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塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 また海賊版の懸念は業界の内部構造に大きな影響を与える。映画業界には劇場公開からDVDの発売、レンタル、BS/CS放送、地上波放送などの時期を適切にずらすことで収益の最大化をはかる「ウィンドウコントロール」とよばれる戦略を採用している。数十年前に比べて、劇場公開から作品が販売・レンタル化されるのがはやくなっているが、それも作品の熱気があるうちにユーザーの手にとってもらう戦略なのである。

 スクリーニングルームによる海賊版の懸念は、ウィンドウコントロールにも影響を与えることが予想される。海賊版が劇場公開時から高画質で流出してしまえばユーザーはDVD購入をためらうが故に、企業は映画のパッケージ販売の時期をはやめなければならなくなるだろう(各国のDVDリリース時期のズレが海賊版被害を悪化させるとの指摘もある)。

映画体験の変化

 最新映画を自宅でシェアできる環境は、我々にとって「映画」に対する捉え方をますます多様にするばかりでなく、「映像体験」そのものにも影響を及ぼすのではないか。ここでは、近年の映画体験に対するユーザーの傾向について、大別して3つを指摘したい。

(1)VRを駆使した体験型映画

 スクリーニングルームだけでなく、近年の映画における多様化は著しい。映画産業はますます解像度を増すテレビに対抗するために、3Dや4DX/MX4Dといった最新技術を施した映画を投入している。大きなスクリーンだけでは物足りないユーザーに、VR(バーチャルリアリティ)による奥深い映像や、動く座席や香りの演出を提供する。まるで遊園地の乗り物に乗るかのような一部の映画は、ユーザーにとって「観る」ものではなく「体験」するものへと変化している。

 ちなみに、伝統的な映画づくりにとってVRは脅威だと語る映画監督のスティーブン・スピルバーグもまた、VRのコンテンツづくりに関わっており、今後も映画を通した新しい技術開発が進んでいくものと思われる。

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