リオデジャネイロ五輪の開幕が近づく中、ロシアのドーピング問題が世間を騒がせている。
ロシアのドーピング問題発覚の最大のきっかけとなったのは、2014年12月に放映されたドイツの公共放送ARDによるドキュメンタリー番組であった。同番組では、実際にドーピングを行っていたロシア人選手の告白が報じられ、世界に大きな衝撃を与えた。そして、これを契機にロシアの国家ぐるみのドーピング戦略が明らかにされていくことになる。
この報道を受けて、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)が公的に調査を開始、2015年11月9日には報告書が提出されたが、その内容は、ロシア陸上界において、禁止薬物の使用や検査を逃れるための贈収賄などが常態化していること、また組織的なドーピングを隠蔽するために正規のものとは異なるダミーの検査場が存在していたことなど、世界にセンセーショナルを巻き起こした。
キーパーソンたちの亡命、急死……
深まる疑念
(2016 陸上 欧州選手権、写真:AP/アフロ)
その後、ドーピング問題の関係者に次々異変が起こるようになった。
まず、ロシア陸上界の組織的ドーピング問題を告発した中距離のユリア・ステパノワ選手と、その夫でモスクワの検査機関に勤務していたビタリー氏が、11月17日までにカナダに政治亡命を申請したのである。11月10日までに、露政府からドーピング検査機関の所長職を解任されていたグリゴリー・ロドチェンコフ氏も、「身の危険」を感じて米国に事実上亡命し、その後はロシアの組織的ドーピングについて生々しい告発を行ってきた。
他方、年明け2月にロシア反ドーピング機関(RUSADA)関係者の不審死が相次いで発覚した。今回の疑惑を受け、RUSADAは「不適格な組織」と認定されている。
2月上旬には、ドーピング問題で中心的役割を果たしていたとされるRUSADAのビャチェスラフ・シニョフ元会長が死亡したが、その詳細はほとんど知られていない。