2025年12月5日(金)

プーチンのロシア

2025年7月28日

 ロシアのロマン・スタロボイト前運輸相は7月7日、プーチン大統領によって突然解任された。その数時間後、自家用車内で銃創を負っているのが見つかり、死亡が確認された。ロシア連邦捜査委員会は「自殺の可能性が高い」とする公式見解を発表している。

プーチン大統領によって突然解任され、亡くなったスタロボイト前運輸相(ZUMA Press/アフロ)

 ウクライナ侵攻以降、反政府活動家やプーチン政権に批判的なメディア関係者、実業家の不審死が数多く報道されている。一方で、スタロボイト氏は、反プーチンの立場は取っておらず、プーチン政権を支える典型的な「体制派エリート」だった。

 そのため、スタロボイト氏の突然の死は、これまで語られているようなプーチン政権による反体制派への抑圧ではなさそうだ。この事案の背景について、スタロボイド氏の経歴をはじめとして公開されている情報の限りにおいて考察してみたい。

「光」と「影」となる転機

 同氏は、1972年にクルスク州で生まれ、父親はクルスク原子力発電所で勤務していたが、74年、レニングラード原子力発電所に転勤となったことに伴い、レニングラード州で幼少期を過ごした。バルティック国立技術大学を卒業後、2005年から10年にサンクトペテルブルグ市政府の投資・戦略プロジェクト委員会に所属し、副議長を務めた。

 中央政府から召喚され、10年から12年にかけてロシア連邦政府の産業インフラ局次長、12年から18年まで連邦道路庁(ロスアフトドール)の長官として道路行政を主導。18年には運輸省次官に昇進し、同年10月にはクルスク州知事代行に任命された。19年から24年にかけて、クルスク州知事として州政を担い、その後、24年5月に運輸大臣に抜擢された。

 スタロボイド氏が運輸大臣に昇りつめるにあたっては、「光」と「影」ともいえる重要な転機が二度あった。


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