組織化された、フーリガンによる暴力行為
他方、話は変わるが、6月10日から7月10日まで、ヨーロッパのサッカーの頂点の座を巡ってフランスで開催されていた欧州サッカー連盟(UEFA)のEURO 2016でもロシアのサポーターに含まれていたフーリガンが大きな問題となった1。
6月11日にマルセイユで行われたイングランドーロシア戦の前後に、ロシア人サポーターは、街中やスタジアム内でイングランドのサポーターに対し、目出し帽やマウスピースで自身の身を守りつつ、刀剣や鉄パイプ、ボトルで容赦ない攻撃を加えた他、花火や発煙筒の使用、人種差別行為など多くの問題行動を起こし、双方の衝突に発展した結果、35人の負傷者が出た。事もあろうに、ロシアサッカー協会の幹部で国会議員でもあるレベデフはロシアサポーターの闘争精神を褒め称え、ムトコスポーツ相もフーリガンを称賛した。
だが、これらのフーリガンの行為、特にスタジアムでの暴動は特に重く受け止められた。UEFAは14日に、同事件を起こしたロシアに対する処分を発表した。その処分内容の概要は、ロシアサッカー協会に対し15万ユーロ(約1800万円)の罰金を科すと共に、サポーターが再度問題を起こした場合はロシアを執行猶予付きの失格処分とした。さすがに、執行猶予がついたとはいえ失格処分がなされたことで、ロシア政府も動いたのか、まさにこの日にロシア政府も初めて暴力行為を批判した。
ただ、この処分は、スタジアムで起きた事件にのみ適応されるものであったため、スタジアム外での暴動には懸念が残った。
その懸念は現実のものとなり、15日のロシアースロバキア戦が行われたリールでも、黒づくめの少人数のロシア人が、大人数で飲んでいたイングランドとウェールズのサポーターに椅子を投げるなどして攻撃し、乱闘に発展したのである。乱闘は警察によって制止され、二人のロシア人が逮捕され、11万9000ユーロの罰金も課せられた。
また、16日には、ドイツ・ケルンで、泥酔したロシアのフーリガンに3人のスペイン人が襲撃され、1人は鼻を骨折、2人は軽く負傷する事件も起きた。このフーリガンは11日のマルセイユでの暴動にも加わっていたという説もある。
1:なお、ロシア代表は6月20日に、グループB最終節でウェールズに敗北してグループ最下位となって敗退した。敗戦試合の内容がひどかったとして、レオニド・スルツキ監督は辞任した。