2024年7月16日(火)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年9月19日

 Bも全く同じことを考えてAを攻撃します。だから喧嘩が起きるのです。もちろん、単なる感情的な殴り合いも起きますが、理性的な人々が合理的に行動しても喧嘩は起きるのです。どちらにとっても平和が一番なのに、どちらも合理的に行動すると喧嘩になり、どちらにとっても悪い結果が生じてしまう、というわけです。

 戦争も同じことです。戦争というのは国と国の喧嘩ですから。

経済学における「囚人のジレンマ」という言葉

 本件は、「囚人のジレンマ」と呼ばれる経済学の一分野です。2人の共犯者が互いに連絡をとれないような独房で取り調べを受けるという設定です。御互いが黙秘すれば御互いが懲役1年、1人が黙秘して1人が自白すれば(相手を裏切って密告すれば)、黙秘した者は懲役8年、自白したものは無罪放免、2人とも自白した場合には2人とも懲役5年だとします。

 2人の囚人は、御互いに相棒が自白したか否か知りませんが、それでも自分は自白した方が得だと判断して自白することになるのです。「相手が黙秘したとしよう。自分が自白すれば無罪、自分も黙秘すれば懲役1年」「相手が自白するとしよう。自分が自白すれば懲役5年、自分が黙秘すれば懲役8年」「つまり、相手が黙秘しようと自白しようと、自分としては自白した方が得だ」と考えるからです。

 御互いが独房にいて、相手がどうするか見えなくても、自分の取るべき行動は合理的に決められるのです。そして、御互いが合理的に行動した結果、2人の合計の懲役は10年となり、他の様々な組み合わせよりも長くなってしまうのです。

ゲームを繰り返す場合状況が異なってくることも

 もちろん、利害の対立する人々が何時でも喧嘩をしているわけではなく、各国がいつでも戦争をしているわけではありません。第一に周囲が止めるからです。警察官に怒られる、国連に非難される、等々が抑止力として働くわけです。

 しかし、それ以上に重要なのは、意思決定は一度限りではない、ということです。今回相手を攻撃して得をしても、次回以降は必ず喧嘩になるでしょう。それなら、今回は攻撃せずに、「今日は、僕は君を攻撃しない。君が僕を攻撃したら、明日からは僕は君を攻撃することにする。君が今日僕を攻撃しなかったら、明日も僕は君を攻撃しない」と宣言する手があります。相手が賢ければ、私の宣言を聞いて、攻撃しない方を選択するでしょう。そうなれば、御互いに仲良く暮らせてハッピーになれるわけです。


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