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2016年7月30日

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宮川公男 (みやかわ・ただお)

一橋大学名誉教授、麗澤大学名誉教授、元(財)統計研究会理事長。著者に『基本統計学』(有斐閣)、『政策科学の基礎』(東洋経済新報社)、「統計学でリスクと向き合う」(東洋経済新報社)、「統計学の日本史」(東京大学出版会)など多数。

「5桁クラブ」の持つ影響力

 ここではまず「5桁クラブ」の大きな影響力を私が数値的に計算した具体的なケースを2つ紹介しておこう。

 2012年12月に第2次安倍内閣が出現してアベノミクスがスタートし、翌13年3月の黒田新総裁による金融緩和もあって、日経平均は12年末の1万395円から13年末の1万6291円まで年間57%という史上2位(1位は72年の列島改造ブームの92%)の驚異的な上昇率を記録した。この上昇への225銘柄中わずか5銘柄の「5桁クラブ」の寄与度は実に35%に達しており、その内訳はファーストリテイリングの14%をはじめ、ソフトバンク12%、KDDI 5%、ファナック2%、京セラ2%であった。

 また日経平均は、00年3月にアメリカのITバブルがはじけた直後に、4月14日の問題含みの30銘柄入れ替え発表によって17日に2万円台を割った。以後15年余り一度も2万円を回復したことはなく、15年4月22日にようやく終り値で2万円台を回復し、同年6月24日に2万868円の高値に達したが、その後チャイナ・ショック、円高、原油安などにより下降局面に入り、ちょうど1年後の16年6月24日にはBREXITショックで1万4864円の安値をつけた。

 このピークからボトムまでの期間について同じように日経平均の下落幅6004円に対する5桁クラブの貢献度を計算したところ、ファーストリテイリング 19%、ファナック 7%、ソフトバンク 4%、京セラ 3%、KDDI 0.4%で、全体では33%という大きさであった。ここでも5桁クラブの貢献度の大きさには驚くべきものがある。要するに、日経平均は上昇も下落も僅か5銘柄の5桁クラブの力によって大きく決まっているのである。なお、これら5銘柄はすべて00年4月の30銘柄入れ替え以後、日経平均に採用されたものである。

価格ウェイト問題に無頓着な日経平均

 この5桁クラブ問題は価格ウェイト問題と呼ばれているものであるが、この問題をきわめて注意深く扱っているダウ・ジョーンズ工業株価平均(DJIA、以下NYダウと記す)と、それに全く無頓着としか思われない日経平均とでは雲泥の差があり、それが両者の間での信頼性の差の主要な原因の一つである。

 一例をあげると、NYダウでは15年3月7日にアップル社をAT&Tと入れ替えに30銘柄に採用したが、それは700ドルをこえる高株価だった同社が1対7の株式分割を行った後であった。採用銘柄の大部分の株価が2桁である中にとび抜けて高株価の銘柄を採用すると価格ウェイト問題が大きく悪化することをおそれ、NYダウはアップル社が14年4月23日にアナウンスして6月9日に実施した株式分割で同社の株価が下がるのを待っていたのであり、30銘柄入りを希望していた同社もそれに応じたと考えられるのである。

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