ちなみに、120年前に誕生したNYダウ30銘柄の中で今日唯一残っている銘柄はGEであるが、GEはその後の成長によって株式分割を8回くり返し、1株が1152株になっている。したがって、日経平均のように分子修正方式を採用するとNY株価指数の分子に株価が1152倍されて算入されることになる。そんな株価指数が全く用をなさないことは明らかである。要するに日経の「みなし額面」方式は、株式の額面発行方式時代の一株当り払い込み資本50円という時価発行時代の現在全く無意味な数字にしがみついたものであり、それは単純平均方式の株価指数の価格ウェイト問題を悪化させ平均株価指数としての意味を失わせるばかりの代物なのである。
さらに重大なことは、これを悪用した投機筋の巨額なマネー投入によって日経平均が操作される危険性が高まるということである。
株式市場のカジノ化を後押しする「日経レバレッジ」
5月11日の日本経済新聞(夕刊)に衝撃的な報道があった。それは15年度のETF(上場投資信託)の売買代金ランキングで、ETF全体の売買代金合計が前年度比9割上昇した68兆円弱の中で、日経平均の2倍の値動きを目指す「レバレッジ型」に人気が集中していることを伝えたものである。
衝撃的なのは野村アセットマネジメントが運用する売買代金トップの日経平均2倍連動型のETF(略称:日経レバ)が、前年比倍増で約47兆円、全体の約7割を占めたということである。たった1銘柄の商品の年間売買代金がGDPの1割にも達する勢いであるということには誰もが驚かざるを得ないであろう。そして売買代金20位までのETF銘柄のうち9銘柄の日経平均連動型の売買代金合計が約60兆5千億円に達していることも注目されることである。なお、今年も1~6月の日経レバの売買代金は、約25兆6000億円で、2位トヨタ自動車の株式の売買代金8兆7000億円を大きく引き離している。
ETFの歴史はまだ新しく、1993年1月に設定されたSPYUSが世界初のものとされる。しかしETFのような金融商品に対する潜在的ニーズはもっと古く、わが国ではいざなぎ景気の中での1968年春からの株価ブームで、日経平均の前身の東証ダウも69年5月31日は史上はじめて2000円の大台に乗るというように急騰していた当時、ダウ式平均株価における倍率を理解していない多くの投資家が、常識的な平均株価に倍率のかかった値動きをする東証ダウの値動きの良さにひかれ、証券会社店頭にダウという株を買いたいと現われたという逸話があり、それが東証がダウ式を諦め、TOPIXを開発した契機となったのである。