Wedge REPORT

2016年7月30日

»著者プロフィール
著者
閉じる

宮川公男 (みやかわ・ただお)

一橋大学名誉教授、麗澤大学名誉教授、元(財)統計研究会理事長。著者に『基本統計学』(有斐閣)、『政策科学の基礎』(東洋経済新報社)、「統計学でリスクと向き合う」(東洋経済新報社)、「統計学の日本史」(東京大学出版会)など多数。

ダウ・ジョーンズ工業株平均誕生120周年を祝い、ライトアップされたエンパイア・ステート・ビル(©2016 S&P Dow Jones Indices)

日経平均是正の難しさ

 その頃の投資家のニーズはせめて長期的に平均株価と同程度の投資パフォーマンスをあげたいという健全なニーズであったが、右肩上り時代が終って上下変動の反復時代に入って現われたETFは投資よりも投機性の強いものとなり、特にレバレッジ型ETFは専門家が3日をこえるような継続保有はすすめられないというほどの完全にデイトレード向きの投機商品となってしまっている。したがってその売買回転率は異常に高く、前述の日経レバに至っては、2015年には1日の回転率が100%をこえる驚異的な日も多く現われるようになり、さらに200%をこえる日さえ現われている。

 本稿で指摘したような問題の深刻な日経平均に連動した金融商品に連動したマネーの動きがこのように巨額に達していることは、海外投資家が信用しないが悪用している可能性が高い日経平均の欠陥の是正がいかに難しいか、そして現在のカジノ化したマネー経済のゆくえがこれからどうなるかというさらに大きな問題につながっているのである。

 ニューヨークのウォールストリートで世界初の最古の株価指数として、ダウ・ジョーンズ工業株価平均が1896年5月26日に40ドル94セントでスタートしたときから、奇しくも同日に伊勢志摩サミットが開幕した今年でちょうど120年が経過した。

 ニューヨークではこれを祝して、5月25、26日両日の日没、赤と緑色でライトアップされたエンパイア・ステート・ビルが夜空に鮮やかに浮かび上った。そのNYダウを現在算出し提供しているS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社は、その写真を広くメールで全世界に発信し、NYダウを「全世界的に認められた文化的偶像(アイコン)の一つ」とし、「ウォール・ストリート、メイン・ストリート、そして全世界の数百万、数千万の人々にとってアメリカ株式市場の日々のシンボル」となっているとその信頼性を自信満々に誇示している。

 それにくらべて日本を代表する株価指数である日経平均はどうか。

 日経平均は今から3年後の19年5月16日には70周年を迎える。しかし日本経済新聞社はNYダウの120周年を祝ったS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社と同じように自信と誇りを持ってそれを祝うことができるであろうか。その答えはNOであると筆者は考える。その株価指数としての信頼性はすでに大きく傷ついており、しかも解決困難な大きなジレンマをかかえ込んでしまっている。そのジレンマから脱け出すことは非常に難しく、信頼回復は容易にできることではない。

後記:本稿を校正した7月15日の日経平均株価終り値は1万6497円で、前日比111円(0.68%)高だった。その日5桁クラブ筆頭のユニクロのファーストリテイリングの株価終り値は3万2660円で5000円ストップ高であり、それだけで日経平均は196円押し上げられた(5000円÷25.495≒196円)。このストップ高がなくユニクロの株価が前日比変わらずだったとすれば、日経平均は前日比プラスではなく、マイナス85円(0.52%)だったわけであり、株価が高いユニクロ株を自分の所有する投資ポートフォリオに入れられない大衆投資家の多くはこの日の5桁クラブ効果を苦い思いで実感したことであろう。

注記:本稿に関連してダウ式平均の基本について詳しくは筆者による次の著作を参照されたい。
『日経平均と「失われた20年」』東洋経済新報社(2013)
「アベノミクスの中の日経平均―2013年5月23日の暴落について考える―」Eco-Forum29巻1号、(一財)統計研究会(2013年12月発行)
「日経平均2万円はなぜ難しいか」Eco-Forum 29巻2-3号、
(一財)統計研究会、(2014年2月発行)
「日経平均で評価されるアベノミクス」Eco-Forum 29巻4号、
(一財)統計研究会(2014年8月発行)

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る