2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年7月27日


この論説は、中東関係外交に携わってきた著名な米外交官による政策提言で、賛成できる内容です。米イラン外交関係の再開ができれば最善ですが、そこに至らない場合にも、話し合いのチャネルの強化は重要です。オバマ政権が真剣な考慮を払って然るべき提言です。英国はすでに昨年8月、在イラン大使館を再開しています。米大使館人質事件のようなものが英イラン間にはなかったこともありますが、英国の現実主義外交の反映でもあります。

 現在、イランにおける米国の利益代表は在テヘランのスイス大使館がやっており、米国におけるイランの利益代表は在ワシントンのパキスタン大使館がやっています。この利益代表大使館に双方外交官を出していますが、まずそれを格上げすることを考えてよいでしょう。

 外交議論の中で、関与すべきか否かがあたかも政策問題のように話されることがありますが、関与の是非は政策問題ではなく、関与することが多くの場合正しいものです。対話を行うか否かについても同様です。関与、対話の中身が重要なのです。対話も関与も外交の手段であり、それ以上のものであると考えない方が良いでしょう。対話することは、相手の立場を受け入れる宥和であるというような議論は、多くの場合正しくありません。

 外交官は二人の筆者のように考える傾向がありますが、政治家は、戦前の近衛文麿の「蒋介石、相手にせず」声明に見られるように、関与や対話を拒否したりすることがあります。こういうことは喝采を受けることもありますが、大体において誤りです。

 対話と制裁、対話と圧力も、国際政治では両立しているのが常態なのです。
 

  
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