上記論説では、欧州のアジアの安全保障に対する関心は薄く、仏国防相が、南シナ海への欧州の関与を提案しても欧州の他国は聞く耳を持たず、他方、ASEANは、欧州は衰退しているうえに、経済危機など自らの心配事で頭がいっぱいでアジアに注意を払う余裕がなく、「中国の親友」になろうとする英国が、中国の指示でEUのコンセンサスを妨害しかねないなどと欧州に批判的であるが、南シナ海問題はルールに基づく国際秩序の将来がかかった問題であり、ASEANは欧州の関与を歓迎すべきである、との趣旨を述べています。
欧州の安全保障の関心はロシアだった
欧州の安全保障上の関心は、一貫してロシアであり、アジアの安全保障に対する関心が薄かったのも無理はありません。欧州のアジアに対する関心は主として経済的なものであり、特に、中国の経済発展にあやかりたいとの魂胆が明らかでした。
他方、アジアの安全保障上の関心の中心は中国であり、安全保障に関する欧州とアジア、特にASEANの土俵は異なっていました。
しかし、南シナ海の問題は、単にアジアにおける中国の影響力の拡大のみにとどまらず、ルールに基づく国際秩序の維持の問題であり、欧州も関心をもって当然です。欧州は確かに経済危機、難民、移民問題、イギリスのEU離脱問題など、自身のかかえる諸難題への対処に手いっぱいですが、国際政治の一つの重要な極であることには変わりありません。南シナ海への関与は、欧州の政治的存在感を示すうえでも意味があります。
欧州の南シナ海問題への関与は、日本、米国そしてASEANにとって歓迎すべきことです。ASEANはEUに対する冷ややかな態度を変え、この問題についての欧州との対話を進めるべきであり、日本も、欧州との二国間対話あるいは多国間の会合で、欧州の南シナ海問題への関与を推進すべきでしょう。
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