障害のある人とない人が一緒に楽しめる社会を築く
初瀬 松森さんといえば、イグ・ノーベル賞を受賞した、「ワサビの匂いで報せる火災報知器」が有名です。開発までにいろいろなご苦労があったとお聞きしたことがあるのですが、情報の伝達手段には様々な方法があることを教えてもらいました。
それでは最後に、今後の夢をお聞かせください。
松森 テレビのCMすべてに字幕を付けることです。現在、聴覚障害の手帳を持っている人は32万4000人ほどですが、そこへ軽度の難聴まで加えると約2000万人とも言われています。
企業がCMに字幕をつけることで、これまで対象外としてきたひとたちを新たなマーケットに取り込むことができます。このことは19年も続けているのですが、現在やっと15社くらいが字幕付きでCMを放送しています。テレビをつければ、音声ガイドがあり、字幕があり、手話があり、外国語翻訳ができたり、様々な手段をその人が選べる社会システムを実現させたいです。日本の映画だってそうです。字幕がないから聴覚障害者は楽しめないという矛盾をなくしたいです。
もうひとつは新しい本を書きたいなぁと思っています。初瀬さんともご一緒に書いてみたいですよね! 綺麗な面だけでなく、真っ黒だったり、青かったりピンクだったり黄色だったり、障害者のいろんな色や面を書いてみたいんです。出版社さん、よろしくお願いします!
あとは子ども対象の講演会を増やしたいですね。子どもにはバリアがありませんから。子どもの頃から多様性を受け入れる寛容性の大切さを理解してほしいと思っています。
初瀬 その先に障害のある人とない人が、一緒に楽しめる社会を築くということですね。松森さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
<松森果林 プロフィール>
ユニバーサルデザインアドバイザー/障害者政策委員会委員。ライフワークは、誰もが楽しく暮らせる生活を目指す。ユニバーサルデザインをテーマに執筆活動、講演活動を行い、大学の講師、企業の顧問など活躍は多彩。住まいのあるマンションでは、近所のママたちを集めて「井戸端手話の会」を開催し、楽しみながら手話の輪を広げている。著書に『音のない世界と音のある世界をつなぐ? ユニバーサルデザインで世界を変えたい!』(岩波ジュニア新書)『誰でも手話リンガル』(明治書院)『星の音が聴こえますか』(筑摩書房)『ゆうことカリンのバリアフリーコミュニケーション』(小学館)『“音”を見たことありますか?』(小学館)
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