「お金は大事なことだと思います。これから5年も10年も野球人生があるんなら、ぼくも迷ったかもわかりません。でも、もう先が見えてきたし、あと1年でやめなければならないかもしれない。野球人生の最後に、最もやりがいを感じて野球をやれるのはどこなのかと考えると、ここ(広島)に帰ってくるのが一番だろう、という結論になりました」
金よりやりがい、それも野球人生で一番のやりがいを求めて帰ってきた。そういう生き方を選んだ先に、本拠地マツダスタジアムでの200勝はある。カープファンもそれがわかっているから、これ以上はない温かな拍手と歓声で祝福した。そんな広島のファンについて、黒田もこういう思いを吐露していた。
育った選手に対する愛着
「メジャーのドジャースやヤンキースにいるときも結構応援してもらいましたけど、アメリカは日本と比べると、ファンの人たちにもどこかドライなところがあるように感じてたんです。FAやトレードなどで選手が頻繁に行ったり来たりするからでもあるんでしょうね。その点、日本の場合は、地元のチーム、そこで育った選手に対する愛着が強い。とくに地方の町にあるカープは、応援してくれる人たちの気持ちの熱さが違うんです。正直、そういうファンの期待がプレッシャーに感じられることもありますが、それに応えようという思いがいい投球につながりますから」
200勝を達成した直後も、「ファンの方々、メディアの方々にたくさんのプレッシャーをかけていただきました。おかげで、早く決めたいという気持ちが強かった」と語っていた黒田。次の目標は1991年以来25年ぶりの優勝、84年以来32年ぶりの日本一である。「今年のチームは、20年間野球をやってきた中でベストのチーム。最後は、そのチームメートたちと優勝したい」というセリフは、200勝と同じくらい記憶に残る名セリフだった。
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