チャレンジやリスクを取る風土を失い、何もやらず、無難にこなす人材ばかりが認められ、昇進するような制度は会社の力をそぐ。もし人事がそれを放置しているなら、恥と感じるべきだ。育児や介護などの理由で職場を離れた社員は、二度と同僚に追いつけないような制度と運用は排除し、実力主義に基づいて抜擢する制度に変えていかなければならない。
従来と同じように指示を確実に実行できる「優秀」な人材だけを作るのではなく、環境やビジネスルールが変わることを予見し、変化を先取りして、未来の扉を苦しみながら切り拓こうとする人材を作るべきだ。そのやり方を模索することが、経営に寄与する人事への転換点になる。
そのためには上司の役割の一つに、将来の人材育成に寄与したかどうかを加え、業績と同じように部下育成を評価していくことが大変重要になる。人が勝手に育つという幻想はそろそろ捨ててほしい。
業績でも過去に前例のある仕事と未知の仕事、経営を左右するものとそうでないものを区別し、評価軸を変えていかなければならない。過去の仕事の仕方やスタイルにかかわらず、他社のやっていないことや気づいていないことに率先して取り組むことこそ評価する適切なKPI(業績評価の指標)を設定する様な工夫を人事はしてほしい。
そのために、人事は事業部門と議論し、何が「業績」になるかを不断に変え、決めていく必要がある。毎回、過去と同じ評価軸や昇格ルールだけを大事にしている会社には、将来会社を任せるにふさわしい人材は出てこない。
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