坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2016年8月24日

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坂本幸雄 (さかもと・ゆきお)

現ウィンコンサルタント社長、元エルピーダメモリ社長

日本体育大学卒業後、日本テキサス・インスツルメンツに入社し、93年副社長。神戸製鋼所、日本ファウンドリー社長を経て、02年エルピーダメモリ社長。現在ウィンコンサルタント社長。

 孫さんは「家庭やオフィスのあらゆるものがインターネットに繋がる」と話していたが、これもARMのCPUとはあまり関係がない。大量にARMの半導体を必要とするIoT製品が今後生まれるか、今のところ相当な疑問を感じると言わざるをえない。

「IoT時代の到来でARMはさらに成長する」とはよく耳にする言葉だが、具体的にどの製品でどのように伸びるのか、私はまだ納得する意見を聞いたことがない。

 スマホユーザー数が倍になっても、あまり大きくない売り上げが倍になる程度で、規模を追いかけると利益率は低下する。スマホのCPUのシェアを維持し続けるのも簡単ではない。3・3兆円という超高額での買収となったことから、潜在的競争者が出現する可能性が高まっている。実際に米国では、グーグルなどから自由度の高い設計仕様のCPUをつくる動きが出ているという。

 今回の買収劇で億万長者になったARMのエンジニアもいる。欧米人は大金を手にすると、起業したがる文化をもつ。ARMの社員がライバル企業を立ち上げるシナリオも考えられる。

 また、仮にIoT時代が到来したとしても、基本設計を広く公開するオープンアーキテクチャーになると思われ、知的財産で稼ぐARMには不利な状況になる。

 ただし、例えば中国の半導体ファウンドリー企業(製造に特化した企業)と手を結ぶなどの秘策があるなら話は別だ。これならIoTとは関係なく儲けることができる可能性はあるが、今のところ、その兆候は見られない。

  
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◆Wedge2016年9月号より

 

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