付加価値税法案への猛反発
近々開催のIMF理事会を意識してか、エジプト国会は8月29日、付加価値税法案を承認。当初案は税率14%であったが、12%への引き下げを主張する反対派を懐柔するためか、16年7月1日から1年間は税率13%とし、翌年度から14%に引き上げる内容となった。また約50の日用品・基礎サービスは例外とされた。
だが国会内の左翼勢力を中心とする「20-30集団」は、承認後に記者会見を開きVATの導入に断固反対すると共に大規模な抗議運動の展開を示唆した。「20-30集団」という名称は、11年1月20日と13年6月30日に開かれた大規模な反政府集会の開催日から名付けられた。同集団には著名な映画監督のハーリド・ユーセフ氏なども含まれ、無視はできない存在だ。残る構造改革の実施も容易でないことを示しているといえよう。
政権にとって間が悪いのは、ハリド・ハナフィ供給・国内通商相が8月25日、新たに発覚した小麦補助金の不正詐取事件の責任を取り辞任に追い込まれたことである。小麦の収穫量を水増し申告しての不正受給であるだけに各種改革策導入の痛みを最も受ける低所得者の憤りは大きい。
シシ大統領は最近行った主要国内紙のインタビューで「経済改革を先送りする時間はない」「国民も共に戦ってほしい」「私は国民が支持する限り戦い続ける」と述べ、痛みを伴う改革に理解を求めた。国民の賛同がどこまで得られるのか行方が注目される。
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