対立の構図の変化
USAトゥデイとサフォーク大学(マサチューセッツ州)の共同世論調査(2016年8月24-29日実施)によれば、アフリカ系の8割強並びにヒスパニック系の6割強の有権者がトランプ候補を人種差別者として捉えています。同候補は、米国史上初のアフリカ系大統領になったオバマ氏に対して米国で出生していないので大統領の資格がないと主張し、出生証明書を要求してきました。結局、オバマ大統領は証明書を提出し、ハワイ出身であることを証明したのですが、この件で同大統領にアイデンティティを持っているアフリカ系有権者は同候補に侮辱されたという強い思いを抱いたのです。
そこでアフリカ系の支持率向上を狙ったトランプ候補は、演説の中で自分はリンカーン大統領と同じ共和党の候補者であると主張しています。周知の通り、リンカーン大統領は奴隷解放宣言を行いました。
さらに、トランプ候補は中西部ミシガン州デトロイトにあるアフリカ系が集う教会を訪問し、「米国は1つの国家です。誰かが傷つけば、すべての人が一緒に傷つくのです」と語り、同系が経験している人種差別に理解を示したのです。
共和党候補指名争いで、トランプ候補は「白人労働者VS.不法移民」という対立の構図を作り、票を獲得してきました。本選に入ると、「ヒスパニック系VS.不法移民」及び「アフリカ系VS.不法移民」という構図に変えました。不法移民が合法のヒスパニック系やアフリカ系の職を奪っているという議論を始めたのです。ただ、対立の構図を変えても、変化しない部分があります。簡潔に言ってしまえば、相変わらず分断による選挙戦略を展開している点です。