2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月26日

 最近、内モンゴルで開催された中国とASEAN10カ国の会議において、南シナ海における海洋の行動規範を来年半ばまでにつくることが合意されました。しかし、最近の中国の独善的な海洋進出ぶりから見て、中国の望む行動規範とは、しょせん名ばかりで、実体として意味のないものとなろうと、この社説は述べています。最近の中国の南シナ海、東シナ海でとっている行動からみて、この社説の指摘は実体に近いものとなりそうです。

ハーグの裁定は「紙屑」同然

 中国はハーグの仲裁裁判所の裁定を「紙屑」同然として無視し、代りに自らより弱小のASEANの国々との間で、各個撃破の形で自らの望むルールを押し付けようとしています。

 目下、フィリピンは中国とスカボロー礁を巡り交渉しており、中国はフィリピンに経済協力などの見返りを用意するのではないかと見られています。一方では、フィリピンはこれを受け入れるだろうとの根強い見方がある一面、他方では、フィリピンはそう簡単に譲歩しないのではないかとの見方もあります。フィリピン大統領自身、ごく最近、「中国はいずれ東南アジアのすべての国々によって、仲裁判決の遵守を要求されることになるだろう」、「我々は簡単には屈しない」などの発言を行うまでになっています。

 2014年に中国とASEANとの間で取り決められていた「海洋における偶発的衝突回避プロトコール」は、南シナ海に適用されることで合意されていましたが、この取り決めには大きな抜け道があることを本件社説は指摘しています。つまり、この取り決めは海軍だけにしか適用されず、中国が多用する海洋警備の公船や漁船には適用されないことです。また、ホットラインに関する新たなガイドラインが合意されたとしても、それらは、しょせん中国次第で、使用されないこともあるでしょう。

 目下、中国は台湾の新政権との間では、双方の窓口機関同士の交流を停止した状況が続いています。

 中国の口約束を簡単に信じてはならない、というのが本件社説の警告です。最近の中国は、経済失速、腐敗を巡る対立、権力闘争などを抱え、習近平体制としては、内部の求心力を保つためにも、ことさら外部に対し、強硬路線を取りつつあります。特に、南シナ海、東シナ海、台湾海峡において、自分たちだけに通用する一方的な論理を押し付けようとする姿勢が際立っています。

  
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