2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月19日

 元米CIA長官で元イラク駐留米軍・中央軍司令官のペトレイアスと米ブルッキングス研究所上席研究員のオハンロンが、8月9日付のウォールストリート・ジャーナル紙に連名で論説を寄せ、米軍の即応性危機は神話であり、予算の強制削減の影響はあるものの米軍は世界最強の戦闘能力を維持していると述べています。主要点は次の通りです。

米軍の即応性に危機はない

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 米軍の即応性が大統領選挙で再び争点になっているが、幾つかの重要な事実が見過ごされている。国防費強制削減の影響はあったが米軍の戦闘態勢は整っている。米軍は各般の戦闘経験を有し、ハイテク国防産業は最新兵器を供給し、秀逸な諜報能力が米軍を支えている。幾つかの事実を指摘しておきたい。

 目下6000億ドル超の国防予算は冷戦時代の予算を上回る。その額は米国に続く中国、ロシアなど世界上位8か国の国防予算の合計よりも大きい。国防支出はブッシュ政権後期やオバマ政権初期に比べれば少ないが、海外での作戦行動の縮小と財政緊縮のためであり理由のあることである。

 さらなる強制削減がないとすれば、国防省の装備購入予算は今や年間1000億ドルを超える。1990年代から2000年代にかけての低調な調達の時代は終わった。一部航空機等は老朽化し交替や改修が必要だが、大半の装備は概ね良好である。陸軍装備の戦闘使用可能比率は90%にもなる。

 訓練も、テロ等への対処を重視し、10年以上やってきた。2017年までに、陸軍は、毎年全体の三分の一を、海兵隊は、全体の半分を訓練に投入する。空軍は、フル稼働の80〜98%レベルの訓練をする予定である。兵士は優秀で士気も高い。軍隊の在籍期間は下士官で約80カ月となっている。

 このように、米軍は、即応性の危機にはない。しかし、次のような緊急を要する課題がある。近年、縮小された陸軍、海軍は、もう少し強化すべきではないか。航空機の近代化計画では、ドローンや爆撃機をより重視すべきではないか。海軍は、海中ロボットや無人システムの導入を強化すべきではないか。米国は他国の弾道、巡行ミサイルの性能により効果的に対処すべきではないか。

 サイバースペース能力は十分か。中東、欧州等での支援体制を如何に強化するか。シリコンバレーなどの技術革新を国防分野に取り込む方法はないか。国防予算の規模はどれほど拡大すべきか。自己主張を強めるロシアと中国に対し更に何をすべきか。これらの課題に対する答えは分かっている。問題は、それらの課題が現下の議論では十分に議論されていないことである。

出 典:David Petraeus & Michael O’Hanlon ‘The Myth of a U.S. Military ‘Readiness’ Crisis’(Wall Street Journal, August 9, 2016)
http://www.wsj.com/articles/the-myth-of-a-u-s-military-readiness-crisis-1470783221


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