2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月20日

 エコノミスト誌8月13日号は、アフリカにおける中国のプレゼンス拡大に刺激されて、インドや日本がアフリカへの関与を強化、アフリカへの影響力を巡って中国と争っている、と報じています。要旨、次の通り。

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したたかなアフリカ諸国

 中印日の競争の一つは基地や港へのアクセス、つまり海洋支配に関係する。中国は、駐アフリカ国連軍に兵士数千人を派遣、軍艦をアフリカ各地の港に定期的に寄港させ、アデン湾では中国の艦隊が商船(大半は中国船)を護衛するなど、軍事的プレゼンスを拡大している。中国はアデン湾の哨戒を理由に遠隔地での作戦遂行の訓練をしている、との指摘もある。また、海賊対策は、中国初の海外基地をジブチに設ける口実も与えた。もっとも、「真珠の首飾り」(中国からナミビアにかけて一連の海軍基地を設ける計画)は実現していない。

 しかし、インド洋を自らの勢力圏と見るインドは中国を強く警戒、セーシェルやマダガスカルにレーダー基地等を設けて広範な監視網を作りつつある。また、軍事力誇示の能力向上や友好国への兵器供与にも努め、セーシェルのアサンプシオン島では海空軍基地を建設中だ。

 日本の海軍力誇示はもっと控え目だ。海賊対策のための多国籍海軍の支援に加え8月に、アフリカのテロ対策強化に資金援助を約束した。中国と激しく争っているのは外交や貿易の分野で、狙いは、①アフリカの天然資源・市場へのアクセスと、②国連におけるアフリカ54カ国の議決権だ。今や日本によるインフラ投資の必要は広く認められているが、最近は中国との競合も生じている。

 外交面では、日印ともアフリカに安保理常任理事国の地位を与えるべきだと主張してアフリカ諸国と提携。一方、中国は、アフリカの常任理事国入りは支持、インドの常任理事国入りにも反対しないが、見返りに日本の常任理事国入りに反対する中国の立場への支持を期待している。「援助外交」は少なくとも中国の友人獲得に役立ったようだ。国連で中国に同調して投票する国は、中国からより多くのカネを得られると言われる。

 中国は武器売却によっても友人を得ている。2015年までの5年間でサハラ以南への武器供給に中国が占める割合は倍増、全体の約4分の1になったと言われる。また中国は、他国の国内問題への「不介入」政策によって戦争犯罪者の間でも友人を作っている。他方、最近まで憲法で(注:正確には武器輸出三原則で)武器売却を禁じられていた日本は、専ら援助やソフトパワー(教育文化)に力を入れてきたが、中国は孔子学院をアフリカに46校も建て、何千人も中国に呼んで政治研修を受けさせるなど、この面でも日本を凌駕している。
しかし、一部を除いて、ほとんどのアフリカ諸国はライバル同士が争うよう仕向けるのが上手く、多くの国が大使館の新規開設で外交関係の多様化を図っている。アフリカの「利口」な国にとって、今は有利に取引ができる絶好の時、と言える。

出典:‘Asia’s scramble for Africa’(Economist, August 13, 2016)
http://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21704804-india-china-and-japan-are-battling-influence-asias-scramble-africa


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