WEDGE REPORT

2016年9月27日

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藤 和彦 (ふじ・かずひこ)

経済産業研究所上席研究員

1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

 8月22日に、今後1年間の原油価格の見通しを「1バレル=45~50ドルで据え置く」ことを明らかにしたゴールドマン・サックスは、レポートの中で「原油相場の一段の支援に成功すれば他の地域での生産活動を促すことになり、逆効果になるかもしれない」と懸念している。というのも、原油価格が1バレル=50ドル台に向けて回復基調にあるのを受け、米シェール企業大手数社が他社に先んじて生産増に動いているからだ。

 米シェール企業は「技術革新により低コスト生産が可能となった」との論調が一般的だが、筆者は懐疑的である。このようなことが一部に起きたことは確かだろうが、14年後半から原油価格が下落すると、「シェール企業の生産性が上がった」との論調が急に強まったことが解せない。今回のシェール革命を演出した立役者であるウォール街の思惑が見え隠れしているように思えてならないのである。

 リーマンショック後の金融緩和政策の恩恵に浴して大量のジャンク債を発行したシェール企業は、原油価格急落でその台所は「火の車」になっている。例えばシェール企業の最大手の一つであるチェサピークエナジーの8月時点の有利子負債比率は4000以上と天文学的な数字になっている。

 原油価格下落でシェール企業の大量倒産が起きるとの心配が広がれば、ジャンク債市場というウォール街の飯の種の一つが台無しになる。このためにシェール企業の「生産性の向上」が実態以上に喧伝されているとみるのはうがちすぎだろうか。

石油増産の動きを強めるサウジアラビア(写真・REUTERS/AFLO)

記録的な米国ガソリン在庫

 原油市場に話題を戻すと市場関係者の目下の関心は供給過剰だが、需要面の心配はないのだろうか。

 21世紀に入り「爆食」により原油価格を支えてきた中国経済は、今年2月単月ベースで米国を抜いて世界最大の原油輸入国になった(日量804万バレル)が、JPモルガン・チェースは7月1日に「中国は戦略石油備蓄の積み増しを終了する可能性があり、備蓄向けの購入が停止されれば、中国の原油輸入量は約15%(日量約100万バレル)減少する」との見通しを示した。

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