WEDGE REPORT

2016年9月27日

»著者プロフィール
閉じる

藤 和彦 (ふじ・かずひこ)

経済産業研究所上席研究員

1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

 中国の7月の原油輸入量は日量729万バレルと前月に比べて2%以上の減少となった。広範囲で発生した洪水災害の影響とされているが、注目すべきは単月ベースで中国が初めて石油製品の純輸出国になったことである。

 中国国内の精製能力が国内需要をはるかに上回っていることの証左だが、軽油の輸出量は前年比約3倍増の日量37万バレル、石油製品の総輸出量が日量111万バレルに達した。昨年5月に原油輸入が認められた「茶壺(ティーポット)」と呼ばれる民営製油企業が、安値を武器に石油製品の供給を急拡大しているため、国内市場を奪われた国有石油企業も輸出の拡大を余儀なくされていることがその背景にある。

 中国の最近の原油輸入は「茶壺」による石油製品の生産拡大に牽引されていたが、供給過剰状態を解消するために政府が介入する姿勢を示していることから、備蓄向けの購入停止分に加え、「茶壺」の原油需要(日量約100万バレル)が今後減少する可能性が高い。

 石油製品過剰による中国の安値輸出攻勢は米国の原油市場にも悪影響をもたらしつつある。中国から欧州に輸出された石油製品の一部が米国にも流れているため、米国のガソリン在庫がドライビングシーズンにもかかわらず、記録的な高水準となっているのである。

 米国では例年夏期休暇が終了する9月以降ガソリン需要が落ち込むため、製油所はこの時期に定期修理を実施する。これにより原油需要は日量120万バレル減少するとの見方が一般的である。

現実味を増すピークオイル

 さらに深刻な要因が頭をもたげつつある。

原油価格は年末にかけて下落する
(出所:IMF資料を基にウェッジ作成)
注:WTI原油価格の推移。2016年8月以降の点線部分は筆者予測値。写真を拡大

 8月18日付けフィナンシャル・タイムズは「もしピークオイルが来たら、投資家はスマートになる必要がある」とのタイトルの記事を掲載したが、この「ピークオイル」は一世を風靡した「石油供給能力がピークを迎える」ではなく、「石油の需要がピークを迎える」という意味である。石油の需要は先進国で既に細りつつあるが、これが「世界全体でも10~20年以内に起こる」というのが記事の内容である。しかし、筆者はこの予言がもっと早まるのではないかと考えている。世界経済のエンジンがおかしくなりつつあり、特に米国の生産性の伸びが急速に鈍化しているからである。

関連記事

新着記事

»もっと見る