定年バックパッカー海外放浪記

2016年10月30日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年、横浜生まれ。神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

 マティウスが語っていた独身主義の理由は日本の同年代の独身男性とも共通している部分があるが韓国社会独自の事情もあるようだった。まず、マティウスが指摘したのは韓国社会では高卒の工場労働者の給与は同い年の大卒ホワイトカラーと比較したら五分の一程度という賃金格差の問題。今回の旅行費用は約20年間の貯金の全額に匹敵するという。また高卒工場労働者の社会的地位が低く彼自身が仕事に誇りを持てないことも結婚や女性との交際に積極的になれない理由であるという。

シェラレオネ山脈の峠近くの聖堂

 マティウスは20年間工場近くの会社の寮で一人暮らしをしているが、実家とも疎遠になり故郷にはほとんど帰省していないという。韓国では旧正月などに帰省する際は両親にまとまった金額を渡すのが慣例となっておりお金を用意できない息子が自分を恥じて帰省できないというコラムを読んだことがある。

 30数年前、韓国に頻繁に出張した時期に韓国が賃金だけでなく社会的地位においても超格差社会であることを実感した。課長の前では平社員は直立不動であり、屋台の飲み屋に行くと背広を着ているホワイトカラーには女将は愛想よく対応するがジャンパーを着た労働者風が店に入って来ると露骨に無視するのであった。

 また転職率が日本と比較すると格段に高かった。取引先の役員や部長クラスにも同業他社からの転職経験者が何人もいた。聞くと同期入社のライバルに出世競争で先を越されると韓国人特有の強烈な競争意識と自負心から他社に転職するケースが多いという。

何日間も長い山道を歩いてきた巡礼者には初めて遠望する大西洋が特別に輝いて見える

 このような韓国社会特有の圧力がマティウスの人生観に影響を与えているのかとやるせなくなった。サンチアゴ巡礼以降の旅でも韓国の男性バックパッカー(学生以外、すなわち本来社会人であるべき年齢の)に何人も遭遇する機会があったが、みんなアルバイトや非正規雇用で金を貯めては海外旅行をするというライフスタイルであり、マティウスと同じようにどこか世捨て人のような人生観の持ち主が多い。

内気な韓国少女アリスの未来はいずこに

 6月26日 Fabaの公共巡礼宿にて夕食会で韓国人三人組と一緒になった。二人の中年女性と一人の少女であった。三人とも米国から来たというが少女は巡礼の途上で二人と知り合ったようだ。中年女性は韓国系米国人で教会の信者のようであった。少女、アリスは今年米国に留学してサンフランシスコの大学院で社会学を学ぶという。アリスに留学の理由を聞いて韓国社会に特有の事情が見えてきた。

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