2024年4月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月28日

 この論説は、イランの次期最高指導者に保守派のライシがなるだろうと、ほぼ断定的に予測しています。タキーはイラン情勢に詳しい人であり、この予測は信頼に値します。

 ハメネイは1939年生まれで、77歳です。健康状態が悪いとは聞きませんが、いずれにせよ高齢です。最高指導者には任期はありませんが、それほど長く最高指導者でいることはありません。後継者問題を早く決着させておくことはイランの安定のためには良いことです。

ハメネイ氏も同じ

 ライシは聖職者としての立派な経歴を持っていません。ハメネイもそうでした。イラン革命の父ともいうべきホメイニは、法学者による統治(ヴェラーヤテ・ファギーフ)を主張し、それがイラン神政政治の根本になっています。ライシが最高指導者になるというのはその点から見ると、おかしい気もします。タキーが言うように、ハメネイの下、イランは警察国家化したということであれば、ライシの最高指導者就任は自然でしょう。しかし、神政国家と警察国家は違うのであって、そのことについてタキーがもっと説明してくれていればよかったとの感想は禁じ得ません。

 治安当局関係者というのは、弾圧という手段を信頼する傾向がありますが、同時に現実的な思考もします。プーチンがそうです。ソ連時代、KGBの長であったアンドロポフがソ連共産党の書記長になった時には、弾圧の嵐になると言う人もいましたが、そうでもありませんでした。ライシが核合意についてどういう態度に出るかは今後の事態の推移によるのであり、核合意の破棄のようなことを予測することはありません。石油輸出に制裁がかかるようなことにライシが踏み出すとは、イランの国益上、あまり考え難いことです。

  
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