フィナンシャル・タイムズ紙の9月13日付社説が、中露は米への敵意という共通点の上に結びつきを強めており、両国による反西側同盟の危険性を排除すべきでない、と警告しています。要旨、次の通り。
冷戦中最大のインテリジェンスの失敗
1950年代から1960年代初めの中ソ対立を西側が読み誤ったことは、冷戦中最大のインテリジェンスの失敗の一つである。米国が中ソ間の敵意の程度を認識していれば、もっと早期にそれを利用する方法を見出していたかもしれない。
今日、米国と同盟国は、ちょうど逆の失敗を犯す危険がある。ほとんどの西側のアナリストは、中露が真の同盟を結ぶ可能性を排除している。中露両国の専門家すら、両国間の文化的・歴史的不信はあまりにも強いと言っている。しかし、中露関係は既に大方の予想を上回る速さで緊密化している。米国が優越する世界秩序への共通の敵対心に基づく本格的な同盟の潜在的な可能性はある。
9月初め、中露の海軍は南シナ海で過去最大の合同演習を実施した。6月には、東シナ海における日中が係争中の島の近辺で、中露艦船が明白な連携行動をした。南シナ海での中露演習は、ハーグの仲裁裁判所が中国の南シナ海に対する歴史的権利を否定してから2カ月後のことである。中国は判決を不当としているが、プーチンはそういう中国の最も強力な支持者である。
中国は、伝統的に公式の同盟を避けてきた。最近の緊密な国際的パートナーは、パキスタンと北朝鮮だけである。しかし、習近平は、過去40年間のどの前任者よりも積極的な外交政策を採用しており、公式な同盟の考えに近づいている兆候がある。習とプーチンは2013年初め以来17回会談し、実務者レベルでの二国間協議も急増している。
中露には、裏庭への米の干渉に対する共通の敵意に加え、権威主義的政治体制から国家資本主義に至る、多くの類似点がある。習とプーチンは、それぞれの国の「復活」を約束し、大衆迎合的なナショナリズムに訴えかける排外主義を煽り、メディアを通じて「強い支配者」とのイメージを作り上げている。
中露同盟は、特にロシアにとりリスクがある。ロシアは、地域の他の潜在的同盟国を疎外することを懸念している。人口の密集した中国の省が広大な無人のロシアの領土に接していることも懸念している。プーチンは、ロシアがジュニアパートナーになるのではないかとの見方にも苛立っている。一方、中国には、1960年代のソ連との国境紛争、ソ連時代の他の共産主義国家への指導者面をした接し方に、遺恨がある。しかし、両国とも、相違を脇に措き、結束させる要因に集中しようとしている。すなわち、衰退の最終段階にあると彼らが信じる超大国米国への敵意である。
米国と同盟国は、中露関係が不変であるとして反西側同盟の危険性を無視し、冷戦時の誤りを繰り返してはならない。米国は、シリアであれ気候変動であれ、中露と適切な分野で協力したらよい。しかし、警戒が必要であり、東欧とアジアにおける西側の同盟国に安心を提供することの重要性は一層高まっている。
出典:‘Hostility to the US unites Moscow and Beijing’(Financial Times, September 13, 2016)
http://www.ft.com/cms/s/0/d8992f2c-79a3-11e6-a0c6-39e2633162d5.html