オバマ大統領のG20やASEAN関連会議出席のアジア歴訪に際し、9月7日付のニューヨーク・タイムズ紙の社説は、オバマ政権のアジア政策を包括的に評価しています。要旨は次の通りです。
最後の努力
今回のアジア訪問はオバマのアジアへの関与を強める最後の努力となったが、TPPや北朝鮮の核開発など未だ残されている重要な課題がある。しかし、米国が安定化のための存在としてこの地域に留まり、中国の増大する力とその強まる自己主張に対峙する重しの役目を果たすつもりであることについて、オバマはアジア諸国を安心させることでは前進した。
ラオスとの関係が新たな段階に進んだことに加え、ミャンマーとの関係も築かれた。ベトナムとの関係は拡大され、武器禁輸は解除された。米軍による使用のための基地に関する新たな協定がフィリピンと豪州との間で成立した。オバマはインドとの協力関係を新たな段階に高めた。過去10年交渉されてきた両国の軍の間の物品役務の相互支援に係る合意が先月成立したことがそれである。米国はこの地域の諸国との共同軍事演習を大幅に拡大し、また韓国に対するミサイルシステムの供与をはじめ武器の売却を拡大した。
これら諸国を米国との関係強化に駆り立てたものは、中国の増大する軍事能力とその南シナ海に対する図々しい権利主張――埋め立てて飛行場と軍事施設を建設した――である。就任当初、オバマは中国と世界的な問題について協力することを希望したが、中国の侵略的な姿勢と米国経済にとってのアジアの重要性の故に、オバマ政権は、2011年までには、他のアジア諸国との関係を強化する計画を表明することとなった。南シナ海の緊張の高まりには自制的な役割を演じたが、航行の自由というコミットメントを守るため戦略的な水域に軍艦を派遣した。中国およびフィリピン、ベトナムをはじめ他の領有権を主張する諸国には平和的解決を働き掛けたが、中国による深刻な挑発は続いている。他方、双方の利害が一致する場合には中国と米国は重要な貢献をした。イランとの核合意および気候変動に関するパリ協定の批准がそれである。
中国の南シナ海における侵略的な行動は、この地域の将来にとって益々大きな問題となるだろうし、オバマの後任の大統領に複雑な挑戦を提起することとなろう。また、オバマが北朝鮮の脅威を除去し得る見通しはない。中国は効果を持ち得るような圧力を北朝鮮に加えることを拒否している。
オバマおよびアジアの首脳にとってTPPはオバマのアジア政策の中心的要素である。両党の大統領候補や多くの議員が反対しているが、当局者はTPPを承認するよう議会を説得出来ると考えている。
出 典:New York Times ‘Obama Leaves Unfinished Business in Asia’(September 7, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/09/08/opinion/obama-leaves-unfinished-business-in-asia.html?_r=0