2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月18日

 この社説は適切な警告を発しています。中露間には、江沢民時代の2001年にできた中露善隣友好協力条約があり、この条約は準同盟条約といってもよい条約です。平和の破壊など、有事の際に協議すると約束しています。また、軍事協力、安保理での協力、相互の領土一体性支持(台湾を中国の一部と認めるなど)も書いています。

 1950年、60年代の中ソ対立の印象が強く、中ソ双方には相互不信、利益の対立が不可避であるとの先入観があります。そのために中露の接近について正確な評価ができなくなっているきらいがあります。中露の接近にはこの社説の言う通り、警戒心を持っていくのが重要でしょう。
最近のロシアの対外政策で国際的に強く非難されたのはウクライナ侵略とクリミアの奪取ですが、中国はこの問題についてはロシアを支持しています。クリミア併合についての安保理でのロシア非難決議はロシアの拒否権で成立しませんでしたが、中国は棄権しました。

ロシアは中国のジュニアパートナー

 中国の南シナ海での行動について、ロシアは中国の仲裁裁判所判断無視の姿勢を支持しています。南シナ海で中露の海軍は共同演習をしています。日本の北方領土問題については、中国は毛沢東時代の「千島は日本に返されるべし」との立場を転換、「第2次大戦の結果は尊重されるべし」と今は言っています。中国けん制のためにロシアカードを使え得ないかなどの発想は、そういう現状に鑑み、ピント外れの発想であるように思われます。

 ロシアが「台頭する中国との対立は避ける。中国に適応するしかない」という戦略的決定をしたとの仮説を置いて諸状況を見てみると、色々なことが説明できます。中露の力関係はいまや圧倒的に中国有利です。経済力の指標の一つ、GDPでは中国はロシアの約10倍です。ロシアと中国の同盟では、ロシアは中国のジュニアパートナーになるほかありません。ロシアとしては嫌でしょうが、それでも中国と組んで諸国際問題に対処していくしかないと思っているのではないでしょうか。

 ロシア極東の住民は中国より日本が好きですが、政策の方向性はモスクワで決まるものです。

  
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