2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月19日

 マレン元米国統合参謀本部議長とサム・ナン元上院議員が連名で、9月15日付のワシントンポスト紙に論説を掲げ、米国外交評議会の北朝鮮政策タスクフォースの研究成果を紹介しています。両名の論旨は、次の通りです。

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北朝鮮に選択を迫る

 北朝鮮の核・ミサイル開発はアジア、世界の平和に対する深刻な脅威である。韓国と日本、アジアでの米軍兵士、施設への脅威である。米国にとっても、今後、ますます危険となる。次期大統領は、米国を核兵器で攻撃する能力を持った北朝鮮に直面すると考えられる。

 オバマ政権はアジアでの同盟の強化、戦争抑止に成功してきたが、北朝鮮の和解よりも挑戦のほうが良いとの考えを変えさせられなかった。次期大統領は、協力にはより大きな利益を、挑戦にはより大きなコストを提示し、北朝鮮に選択を迫らなければならない。

 我々の目標は安定した核のない平和な朝鮮半島である。これを達成するために、世界の主要国は協力を深め、危険な勢力に核・ミサイル技術が広められないように予防し、またひどい人権侵害に対処すべきである。我々は紛争を起こすのではなく、平和を追求する。

 私達(マレンとナン)は、同時に実施されるべき次の4項目を勧告する。

 1.北朝鮮問題は、米中両国の優先課題にすべきである。中国は北朝鮮を交渉の席に戻す手助けができる。米国は中国に米軍の配置の討議を含む朝鮮半島の将来についての新対話を提案すべきである。この対話では、危機の際の計画の調整を行い、北朝鮮政権の崩壊は米国の政策ではないことを伝達する。

 2.北朝鮮に交渉参加を促す新しいインセンティブを提示すべきである。朝鮮戦争を真に終結させる平和協定の署名、核放棄と人権での進展を条件に国交正常化を含む包括的取り決めの可能性等も話し合う。

 3.制裁強化はなされなければならない。オバマ政権はきつい制裁のための安保理決議を中露の賛成も得て作りあげた。我々は決議の実施を調整する常設の多数国間メカニズムの設置を勧告する。北朝鮮のすべての貨物の臨検を含む安保理決議の執行は北朝鮮に経済的圧力をかけ、北朝鮮からの核・ミサイル物資・技術の拡散を予防する。

 4.米国は日米韓の協力とその抑止力を強化すべきである。米は抑止力強化、制裁実施、ミサイル計画妨害のために、同盟国との作業を強化すべきである。海軍力強化が北朝鮮船舶の阻止、潜水艦の探知、ミサイル発射阻止のために必要になるだろう。

 もし北朝鮮が交渉を拒否するならば、米国と同盟国は北朝鮮にその行動の利益を得させないために新しい軍事措置を適用すべきである。

 我々はまた、米国と同盟国が射程約1000kmのスカッド・ミサイルより射程が大きなすべての北朝鮮のミサイルを打ち落とす能力を作るように勧告する。

 これらの措置は容易でもなく、リスクがないわけでもない。我々は北朝鮮の政権崩壊をもたらす政策は支持しない。4月習近平は、中国は半島での戦争や混乱を許さないと述べた。米中両国はそんなことにならないことに死活的利益を共有する。今が行動の時である。

出 典:Mike Mullen & Sam Nunn ‘How to deal with North Korea’ (Washington Post, September 15, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/mike-mullen-and-sam-nunn-how-to-deal-with-north-korea/2016/09/15/3baa4ade-7ab1-11e6-ac8e-cf8e0dd91dc7_story.html?utm_term=.4046ac9c4329


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