2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2016年11月5日

 また、何台もの中国製の車両が、これまで北朝鮮のミサイル牽引車や多連装ロケット砲搭載車両等に転用されてきた。日本製品も良質なため好まれ、無人機に日本製カメラが搭載されたり、漁船用レーダーが北朝鮮の海軍艦艇に使用された例がある。日本製ハイスピードカメラや発電機等が北朝鮮の核計画に利用された疑惑もある。他方、兵器やミサイルも部品レベルまで分解して輸出されるため、貨物検査をしても判別が困難である。

 これら非合法取引のため、北朝鮮エージェントは世界各地に入り込んで現地企業の従業員になりすましたり、外国籍パスポートを入手して北朝鮮国籍を隠蔽してきた。また、外国人エージェントを巻き込んで香港やブリティッシュ・バージン諸島等にフロント企業を設立し、マネーロンダリングや迂回調達に活用してきた。

 中でも中国・ロシアのみならず、東南アジアでの動向が懸念される。地域統合が進むASEANでは、ヒト・モノの動きの自由化が進められており、最先端製品の工場が立地している。しかし、一部の国を除いて輸出管理体制が未整備な上、北朝鮮エージェントが多数存在するため、先端製品の調達に利用されかねない。

 非合法活動の取り締まりには、関係するヒト、モノ、カネの包括的な取り締まりが必要だ。中でも北朝鮮エージェントの動向の把握が重要だが、そのためには彼らの雇用先やパスポート情報、渡航記録、貿易・金融取引記録等の情報が必須である。しかし、加盟国による国連捜査への協力が不十分なため、非合法活動の摘発には限界がある。

制裁の実効性を高めよ、求められる日本の役割

大井ふ頭に寄港した貨物船から押収されたアルミ合金(写真・THE PANEL'S 2014 FINAL REPORT)

 日本には、2270号決議の完全履行のためにいくつか重要な法改正が必要と思われる。

 まず、対北朝鮮制裁決議を実行するための根拠法で10年に施行された貨物検査特別措置法では、日本に寄港した貨物船に北朝鮮関連の兵器類が積載されていればそれらを押収できるが、兵器部品に転用されうる市販品などは押収が困難な場合が多いと思われる。例えば、12年、同法に基づいて、大井ふ頭に寄港した貨物船から核関連物資が摘発された際、コンテナ2台分の貨物の中からアルミ合金5本しか押収できなかった。決議2270号第27項では、加盟国の追加的義務として、規制リストにある禁止品目だけでなく、市販品を含め、核・ミサイル・通常兵器に転用可能な「いかなる品目」も差し押さえることを義務付けている。


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