また、安保理は、有形無形を問わず、制裁違反の企業・個人のあらゆる資産の凍結を各国に義務付けているが、日本では「資産」を金融資産等に限定している感が否めない。決議2270号第12項に従えば、いかなる形の資産、例えば貨物船なども安保理決議違反であれば差し押さえなければならない。日本では資産凍結の国内法のさらなる整備が必要だろう。
対外政策としては、対北朝鮮制裁に非協力的な加盟国に対するさらに積極的なアプローチが求められるだろう。例えば、韓国と協力して、アフリカや一部の東南アジア諸国に北朝鮮との非合法取引を断ち切らせるために、北朝鮮に代わって現地警察の訓練や技術支援を行うのも一案だ。
また、外国籍パスポートを取得した北朝鮮人や海外企業に雇われている北朝鮮人の情報等を各国から集約、共有する仕組みづくりも不可欠だ。制裁違反に加担した人物については、国際刑事警察機構が中心になって顔写真、氏名、生年月日、別名などの生体認証情報を収集し、国連や加盟国と共有する体制も急務だ。特に東南アジア諸国に対しては、ヒトとモノの移動を的確にモニターできるよう、日本は法的・技術的支援も含めて、より積極的に働きかけていく必要がある。兵器転用された市販品の事例を収集、共有することも重要だ。
これまで述べてきた制裁は外交のためのツールであり、外交にとって代わるものではない。やはり対話が必要なのである。例えば昨年、イランとの核問題に関する最終合意に至るまで、欧米は制裁と同時に外交的交渉を粘り強く続けていた。しかし、北朝鮮とは対話がない。その役割を米中が互いに押し付けあっている状態だ。まずは、北朝鮮の核・ミサイル計画に歯止めをかけることを念頭に、対話のための現実的な環境整備が必要であろう。そのために日本が関係国の仲介役となり、外交努力をさらに強めることが求められるだろう。
この記事は、現在発売中のWedge11月号の「核の実戦配備が迫る北朝鮮 抑止態勢の強化を急げ」から転載しております。
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