2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2016年11月5日

中国の北への配慮が北の不安定化を助長する

 国際社会において、対北朝鮮制裁は必ずしも最重要課題ではなく、競合する様々な政策課題の中の一つにすぎない。2006年以降、対北朝鮮制裁の安保理決議が5本採択されており、国連の全加盟国はいずれも国内履行報告書の提出が義務づけられてきたが、実際に提出した国は半数ほどだ。そもそも日本や欧米のように、国連での取り決めを真面目に守ろうとする国は数少ない。

 中でも制裁履行面で問題なのは、北朝鮮と歴史的に軍事、政治、経済面で関係を維持してきた国々だ。中国やロシアをはじめ、一部を除く東南アジア諸国や中東、アフリカ、キューバなどは、国連の制裁違反事件捜査に非協力的であり、制裁違反した人物や企業の情報を隠蔽してきた。

 特に中国の場合、政治的指導部は北朝鮮の体制崩壊への懸念もあるようで、これまで制裁の全面履行には真剣ではなかった。その結果、北朝鮮のミサイルや核の開発に歯止めがかからず、結果的に北朝鮮に対してさらなる制裁強化策が導入されるという悪循環を繰り返してきた。

 今後、追加の国連制裁策として、北朝鮮労働者派遣の禁止や北朝鮮国営の高麗航空に対する制裁等が導入されれば、さらに北朝鮮経済に悪影響を及ぼすことになるだろう。中国の北朝鮮に対する思慮の浅い行為が、かえって北朝鮮の不安定化を助長する帰結を生み出してきた。中国首脳部は自らの戦略的判断ミスを認識するべきだ。

 ただ、中国を含む数多くの国々にとって、そもそも「法による統治」体制が未成熟なことも大きな問題である。仮に政治的指導部が対北朝鮮制裁の全面履行を決断したとしても、実際にそれを遂行できる行政能力があるのかは甚だ疑問である。アフリカ等では、そもそも取り締まり当局者が「国連安保理決議」について知らないことも少なくない。制裁履行の実効性は、当該国の法治体制に大きく影響されざるをえない。

世界中に潜む北のエージェント、判別困難な非合法取引

銀河3号ロケットの残骸には、外国製部品が多数含まれていた(写真・THE PANEL'S 2014 FINAL REPORT)

 北朝鮮は世界中から市販品を買い集め、国際社会が想像もしない形で兵器に転用する。12年12月に打ち上げられた銀河3号ロケットの残骸からは、温度・圧力変換器やボールベアリングなど、14種類の外国製部品が60点以上見つかった。中国製品に加え、米国、韓国、英国、スイスなど輸出管理規制が厳しい国々の製品も見つかった。


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