食文化とは、その国や地域に深く根ざすものであり、そこに入り込むことは容易ではない。しかし、日本のもつ高い技術力をもってこそ可能となる「素材そのものの良さを活かす」という価値観は、アサヒビールの牛乳をもって中国で受け入れられた。現地の農業技術や食生活を向上させたいという思いから始まったこのプロジェクトについて、国際経営企画部のチーフプロデューサー・大西隆宏氏は、「まだ道半ばではあるが、今後は1日あたり16トンとれる生乳のうち、唯品への使用分以外を、自社商品として有効活用していきたい」と言う。「素材そのものの良さを活かした」日本では「当たり前」の食物は、今後も中国人の胃袋を満足させていくであろう。
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ここに紹介した2つは、ほんの一部の事例に過ぎない。日本企業が世界で戦うヒントは意外と身近なところにある。
リーマンショックが先進国に深いダメージを与え、今後、国内需要が収縮する一方で、新興国の中間層が大きく膨れ上がっていく見通しを前に、日本企業は今、従来の高付加価値路線と異なるスタイルで新たな市場を切り拓く必要に迫られ、戸惑っているようにも見える。
しかし、心配する必要はない。
自分たちがこれまでに経験してきたことや、日本という地に根ざしていたことで今も残る組織のDNA。当たり前すぎて忘れかけていたものに目を向けることで、ヒントは自ずと見えてくるはずだ。
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