Wedge REPORT

2016年11月7日

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 災害訓練では、東京本社と名古屋本社で交互に災害対策本部を設置して、有事の際の動作確認に努めている。現場だけではなく、本社でも訓練を行うことで、社員の意識を高めている。15年には、タイや中国などの海外拠点から日本の本社に担当者を集め、2日間で2種類の図上訓練を行った。

 まず、地図上に自社やサプライヤー、顧客の拠点をプロットする。地震が起きたと想定して、被害範囲を塗りつぶし、被害想定とそれに対する事業継続計画、必要な経営資源などを書き込み、課題を明らかにするというものだ。訓練を受けた担当者は各国に持ち帰り、この訓練を実際に実施し、現地でBCP運用の舵取り役として活動している。

 15年8月、中国・天津で、巨大爆発事故が発生した。このときも、BCPの取り組みが奏功している。というのも、豊田通商天津では爆発事故の前月に初動訓練を実施していたからだ。

中国・天津での爆発事故では多くの日本企業の事業に影響が出た(写真・VCG/GETTYIMAGES)

 初動訓練は地震発生後、安全を確保し、災害対策本部を立ち上げ、シナリオを提示しない中で状況判断や対策を講じていった。この訓練の約2週間後に起きた天津爆発事故の際は、翌日には全員の安否を確認することができた。発生したケガ人は3人のみで、2日後には建物の被害レポートが写真つきで届いた。現地社員の安否確認が迅速に行えたことで、サプライチェーンを途切らせないための初動にいち早く動けたというわけだ。

 総務部減災・BCM推進室長の山下昌宏氏は、「供給を途切れさせないことが使命であり、BCPを作ることで顧客の信頼にも直結する」と話す。供給網を途切れさせないための訓練に取り組んでいることが同社の付加価値につながっている。

 以上、先進企業の事例を紹介してきた。各社に共通しているのは、単に計画を立てることではなく、有事の際にすぐに行動に移ることができるように経営トップから現場の従業員まで意識を高めておくということである。

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■特集「BCP」で商機を逃すな
 ・Part1 想定外に威力を発揮する「供給網の見える化」
 ・Part2 中小企業は広域連携で一石二鳥
 ・Part3 BCPは成長への投資 危機管理で新たな価値創造を
 ・Part4 社員の生活再建なくして事業継続なし
 ・Part5 被災した中傷自治体は住民を助けられるか?

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