2024年11月23日(土)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年11月10日

勝利演説のポイント

 トランプ候補は、勝利演説の中で国内外に向けてメッセージを発信しました。まず国内の結束を求めた後、勝利に貢献した白人労働者を意識して高速道路、橋、トンネル及び空港などのインフラ整備を行い雇用創出を優先すると主張したのです。続けて、トランプ候補に忠誠を尽くして18カ月の選挙戦を戦った退役軍人を賞賛し、彼らの問題にも取り組むと誓いました。

 選挙戦で米国第一主義のスローガンを掲げたトランプ候補は「米国の利益を最優先し、すべての人と公平にやっていきます。他の国と敵意ではなく共通点、対立ではなくパートナーシップを見出していきます」と述べました。トランプ勝利にショックを受けている全世界に向けた最初のメッセージです。

 一見、協調性を全面に出しているように解釈できますが、ポイントは「公平」です。トランプ候補には独自の「公平・不公平理論」があり、勝利宣言は他の諸国と公平に取引を行う決意なのです。政策議論において同候補の公平・不公平感に基づいた駆け引きに日本はかなり悩まされることになるでしょう。

分断の選挙

 今回の米大統領選挙は分断をさらに進めました。ことに、人種・民族における分断です。選挙期間中、トランプ候補はヒスパニック系及びイスラム系を標的とし、アフリカ系を侮辱する発言をしました。その狙いは、不法移民や文化的多様性に寛容でない白人労働者のモチベーションを高めることでした。

 次に、ジェンダーの分断です。主としてトランプ候補は男性、クリントン候補は女性から支持を得ました。教育レベルによる分断も観察できました。高卒以下はトランプ支持、大卒以上はクリントン支持という構図も存在していました。さらに、共和党内のトランプ対主流派の分断は顕著でした。

 戸別訪問を通じてトランプ候補を人種差別者であると断言する多くのアフリカ系やヒスパニック系の有権者に筆者は遭遇してきました。勝利演説でトランプ候補は国内の結束を呼びかけていましたが、困難であることは間違いありません。

  
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