2024年12月19日(木)

田部康喜のTV読本

2016年11月24日

魅力的な犯人役のゲストスターたち

 事件現場にかけつけ、嗅覚能力が強すぎるので通常はしている鼻の栓を注射器のような装置で外して、嗅ぎまわる華岡(阿部寛)は一見、ユーモラスだ。映像では犯人の姿が幻のように浮かび上がってくる。おおよその年齢や、働いている職場を暗示する匂い、そしてどうしてもわからない匂いなどを、コンビを組む小向(香川照之)に告げる。

 ドラマは毎回、ゲストスターを犯人役に迎えて展開する。第2回は大河ドラマ「龍馬伝」でジョン万次郎を演じるなど、俳優としても評価が高い、ロックバンド・ウルフルズのボーカルのトータス松本だった。

 トータス松本の役はかつて、小向(香川照之)とともに五輪を目指した元陸上自衛官の射撃選手の仙崎士郎。娘を海の事故で亡くしている。

 オフィス街で起きた連続射殺事件の射撃手がいたと思われる、ビルの屋上で華岡(阿部寛)は現場にふさわしくない匂いを嗅ぐ。それは紙おむつに使われる原料であり、なにかわからない花の香である。

 殺されたふたりの会社幹部の接点を探る中で、かつては大型ボートで釣りに行く仲間であることがわかってくる。ひとりは銀行の頭取であり、もうひとりは大企業の会長である。それがある時点を境にしてこの趣味を止めている。生きているひとりは、元防衛省の官僚だった。

 紙おむつの原料の匂いは、紙おむつそのものであり、射撃手は何時間も標的を待つための手段である。花の匂いは、浜辺に咲くものであることが、華岡の分析でわかる。

 射撃手の仙崎(トータス松本)の娘は実は、標的となった3人が乗った大型ボートのスクリューに巻き込まれて死亡したのだった。それを警察は隠ぺいして、溺死とした。

 捜査陣は、第三の犯行を防ごうと仙崎を追い詰める。仙崎と警視庁のスナイパーたちの打ち合いのなかに飛び込んで、仙崎を思いとどまらせる華岡と、拳銃を手にしてかつての選手仲間に標準を合わせる小向。武器を持っていない華岡が、弾丸が飛び交うなかで説得する姿はまた、ユーモラスにみえる。


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