2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2016年11月24日

 第3話では、世界的な名画の匂いを嗅いだ華岡が、描かれた当時は存在しない化学物質を指摘して、贋作騒動が勃発する。

 ゲストの犯人役は、名画を買って同時に贋作を製作させる美術館長・長澤塔子に、国際的に活躍するモデルで、吉本ばなな原作の「キッチン」の映画で女優としてデビューした、川原亜矢子である。贋作を製作する学芸員・志村孝彦にはイッセー尾形が扮する。

クライマックスは、複数の贋作と本物を並べて、「偽物をナイフで切ってみろ」と志村が叫ぶ。華岡は嗅覚と推理力で見事に本物だけを残す。

家族の問題にも翻弄される

 番組は、ゲストにこれまで演じてこなかっただろう役を振っているのが、ひとつの魅力になっている。第1話では、劇団ひとりに元エリートのスクラップ工場で働く青年を、第4話では、黒木瞳にかつてOLをしながら挫折して、新興教団を立ち上げた教祖を演じさせている。ここでも、テーマは、社会が貧富の差によって分断されているなか、いかにして人はいきるのか、殺人事件を通じて描いていく。

 「スニッファー」の家庭もまた、現代社会のなかにある。原作も今回のリメイクも、スニッファーは離婚経験者である。原作では息子、リメイクでは娘がひとりいる。そして、いずれもが、麻薬取引の影がある。スニッファーは捜査のかたわらで、家族の問題にも翻弄されている。

 番組では魅力的なわき役陣を配している。華岡が通う耳鼻咽喉科の女医・末永由紀に井川遥、捜査陣のなかでは早見友梨役の高橋メアリージュンが好演している。
 

  
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