例えばグローバル企業の中には、経営トップの部屋に人材のウォールームを作り、経営陣が徹底的に経営者候補を選ぶための議論をする企業がある。壁にその企業の組織構成を貼りつけ、各組織の人材のデータや顔写真を貼り、どのポジションに誰が良いのかを時期を問わず繰り返し話し合う。もちろん、人事がそのデータを提供する準備ができていることが前提になる。本気で経営者候補を選ぼうと思ったら、このように根気と労力が必要だ。
経営者候補が決まったら、彼ら全員に同じようにチャンスを与えてはいけない。経営陣は候補者1人1人を見比べ、彼らの順位づけをしてほしい。誰が最も優秀かつ次代の経営者として最適かの共通認識を経営陣は持つ必要がある。その後、順位が高い人材から厳しい環境を経験させたい。今担当している事業から意図的に引き抜いて、その企業の命運を左右するような事業を任せるとよい。
経営者候補を引き抜くときには、必ず、「抜けると困る」という事業部からの抵抗にあう。しかし、抵抗があるような人材だからこそ経営者候補になるし、そういった人材を育てないで、その企業に未来はない。
ここで人事に求められるのは、経営者候補の担当する事業が成功するための手助けをすることだ。日本企業は経営者候補となるような人材をみつけると、急にスーパーマン扱いをしはじめ、1人でその事業に送りこみ、無駄な傷だけ負わせてしまうことが多い。
誰にでも苦手な分野や足りない部分はある。経営者候補に対しても、人事が周りの人材を固めてそれらを補強することで、思う存分、彼らが結果を出せる環境を作ってあげて欲しい。
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