2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2016年12月21日

 日本側の交渉方針は,WTOの自由貿易ルールに違反している可能性が高い輸入規制を台湾側が解除してこそ,日台間の経済協力の協議のレベルを上げることができるとしている。つまり交渉の入り口である。

かたくなな台湾

 これは当然の対応であるが,台湾の民衆の眼には,日本が危ない食品を売りさばこうとして台湾に圧力をかけていると映る。台湾では食品安全の問題は貿易問題とは別という意識が強い。現状では,日本側が輸入規制解除を求めれば求めるほど台湾側はかたくなになり,日本への反発が高まる。

 背景には,近年の「台湾アイデンティティ」の高まりもある。アイデンティティというのは他者にバカにされたくないという強い感情であり,中国にもアメリカにも日本にも向かうものである。中国は中台サービス貿易協定の批准ができなければその先の交渉に進めないとして馬政権に強い圧力をかけ,学生らによる国会占拠=ひまわり運動を招いた。日本側としてはこの問題では理が日本にあるので台湾の姿勢にいらだちを覚えることも多いが貿易のルールという大義で直進すれば,上から目線ということで「台湾アイデンティティ」を刺激しかえって事態の解決を遠ざける可能性がある。

 ここは柔軟に並行的な協議を進めるべきではなかろうか。日台の経済協力拡大が双方のプラスになることが見えることによって台湾のかたくなな姿勢も変化してくるであろう。日本の消費者が台湾産のマンゴーをおいしそうに食べている映像が広がれば,台湾でも反応は変わってくる。急がば回れである。

国民党との付き合い方

 馬英九政権は「友日」を唱え,日台漁業協定を締結するなど日台関係の前進に貢献があった。しかし,最後の1年は,歴史認識,慰安婦,海洋問題で執拗な日本批判を繰り返す一方,中台首脳会談に象徴されるように中国傾斜が目立った。このため日本側での馬英九評価は低下した。洪秀柱国民党主席は日本に対し日常的に批判を続けている。

 今回の食品問題で,国民党の立法委員らは蔡政権に対抗するため民衆の不安を利用して日本食品そして日本全体を貶める言動を展開した。国民党の抗議活動の現場を取材した日本メディアの記者はデマ宣伝のあまりのひどさにあきれている。多くの日本国民の眼に国民党は「反日親中」という印象が強まるであろう。

 日本の行動パターンからすると表面上は変わらないが,日台交流の現場で,日本の議員,自治体,各種団体が「反日的な」国民党との交流を避ける傾向が出てくるかもしれない。国民党を見切って民進党と交流をしていけばよいという意見が広がるかもしれない。


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