NATOは知っているが、OTANとなるとわからない。UNといわれれば国連とわかるが、ONUというと聞いたことがない。IMFは、I’m fine. の略で、元気な時は入らないというジョークがあるが、英語圏以外では、OTANやONUと同様に、FMIとよばれることも多い。GATTは例外的に世界中で使われていたが、国際機関の略号は、時々想像もつかないことがある。ベルギーのブリュッセルで「どこ行くの」と聞いて、「OTAN本部」と答えれば、「NATO本部」のことだ。
日本の財務省の次官(財務官)がどうしても専務理事になれない。束になってかかってもフランスの牙城となっているのがFMIだ。すなわちIMFということになる。日本ではあまり報道されなかった大事件があった。2011年に元フランスの蔵相で、社会党から大統領戦にでれば、当選の可能性の高かった、ドミニク・ストロス・カーン(通称DSK)がニューヨークで大事件を起こして逮捕されてしまった。いまだに真相は藪の中だ。やや女性問題で脇の甘いDSKだが、ニューヨークのフランス系ホテルでハウスキーパーの女性とよからぬことをしたということだ。その直後、パリに向かうべくJFK空港から、ことに及んだとされる部屋に携帯電話を忘れたとして電話したが、既に司直が動いており、エールフランス機の中で逮捕されたのだ。
当時のDSKの妻は、有名キャスターで、米国一の弁護士をつけることで彼を救った。弁護士の分析の結果、奇妙なことが浮かび上がった。不思議な話で、そのニュースが出た頃、同ホテルの従業員用の廊下で何人かの男が小躍りしているビデオが見つかり尋問を受けた。スポーツの試合結果で喜んだということで説明がつき、捜査は終わった。後になってその時間には、全米レベルでは重要な試合が全くなかったとされる。
その後、その彼女はいくつかの携帯電話を所有していることもわかり、よくない組織との関係も露見されたためDSKは専務理事を退任したものの無罪となってフランスに帰国している。その後のDSKについてはいつの日か語ることにする。
さて、本件、DSKを引き継いだ、長身のフランス女性クリスティーヌ・ラガルドは直前までフランスの蔵相であった。年も押し詰まった頃になって、フランスの裁判所は彼女に有罪の判決を出したのだ。既に14年夏以降、職務怠慢で国家に損害を与えた罪で独立裁判官はラガルドの留守宅アパートを家宅捜査したりしていた。
すなわちサルコジ前政権時代の蔵相として08年、当時国営のクレディ・リヨネ銀行が、英語ではカラフル・ビジネスマンと形容されるベルナール・タピとアディダスの株を巡って争っていたが、大枚4億ユーロをタピに払うように便宜を図ったというのだ。タピはサルコジの有力支持者でもあり俳優でもあり、不思議な人物だ。
カストロも愛用したアディダス製品であるが、なぜ正式の裁判をせずに調停で金を払うことに決めたのか、当時から不思議であった。そもそも、クレディ・リヨネ銀行を巡っては、ミッテランの時代から続くお騒がせがあり、ECBの総裁を勤め上げたトリシェも本件で刑務所入りか、はたまたECB総裁かといわれた時期があったのは、欧州では周知の事実だろう。