NAFTAへの影響も
日本の自動車メーカーは、1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)により、メキシコで生産した車は米国やカナダに関税なしで輸出できることから、90年以降に自動車メーカーや部品メーカーが相次いで進出した。現在では日本の自動車メーカー全体で年間135万台の生産能力がある。メキシコで生産している車種は小型の車種やピックアップトラックで、労働コストの低いことを活かした価格の安い車種が中心だ。一方で値段の高い中型車以上はメキシコより人件費の高い米国内で製造するなど、車種により米国内とメキシコとで生産拠点を「棲み分け」てきた。
その中でもメキシコに古くから関係が深いのが日産だ。同社は1966年にメキシコでブルーバードの生産を始め、以後、メキシコを生産拠点として強化してきた。現在、日産は年間87万台の生産能力があり、自動車メーカーの中で最大規模。同社は19年には110万台にまで増やす計画を持っており、日産にとってメキシコの生産はなくてはならない拠点だ。
ラスベガスで開催している家電見本市に出席していたカルロス・ゴーン日産社長は5日、トランプ氏がトヨタのメキシコ新工場建設を強く批判したことについて「NAFTAがどうなるか注視している。新しいルールになるのであれば、それに適応する」と述べており、NAFTAルールの変更も見据えている。
メキシコでは現在年間340万台の自動車が生産され、その7割以上が米国やカナダに輸出されている。ジェトロの予測では20年には480万台にまで増えるとみられているが、この見通しも危うくなってきた。
日系企業はメキシコにはNAFTAを利用して生産拠点を築こうと、10年から15年にかけて500社も進出、メキシコに大きな設備投資をしてきた。進出を決めたベースとなったNAFTAそのものが見直されるとなると、進出した企業は関税なしで輸出できるなどの利点を失うことにもなりかねず、大きな方向転換を強いられることになる。