2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2016年11月13日

 米民主党系シンクタンクの米国先端政策研究所のグレン・フクシマ上席研究員は11日、日本記者クラブで米大統領選挙の結果を踏まえてトランプ政権の予想される政策運営について講演、「選挙期間中に言ってきたことを、議会や共和党内のことを考えながらどこまで行動するかを見極めたい。日本に対しては過去30年間、一貫して批判してきている。米国に輸入される日本車に38%の関税をかけるべきだとか、安全保障ただ乗り論などを主張してきたが、大統領になって制約がある中で、それが実際にできるかどうか」と述べ、選挙期間中の過激な発言をそのまま実行するかどうかについては疑問視する見方を示した。

小学2年生でも分かる単語

昨年米議会で演説した安倍首相(GettyImages)

 クリントン候補が負けた原因は「米国の経済、グローバル化、政治の在り方などについての現状に対する有権者の不満が予想以上に多かった。有権者は変化(change)を望んだということだ」と分析。「クリントン候補はエスタブリッシュメント側の人間とみられ、新鮮味がないように受け取られた。テレビ討論などの発言の中身をみるとトランプ候補よりは内容があったが、ウォール街べったりで現状を維持するだけというレッテルを貼られる結果になった。冷たい何か隠しているイメージがあった。一方のトランプ候補は小学生2年生でも分かる単語を使って説明し、人に訴える能力があった。オバマ大統領が選ばれた時もそうだったが、改革してくれるのはワシントンにいる人よりも外にいる人間に期待する人が人多かったようで、ワシントンに『汚染』されているクリントン候補よりトランプ候補の方が現状を変えてくれると思う有権者が多かった」と説明した。

 「興味深かったのは、今回の選挙では世論調査がほとんど当たらなかったということで、新聞、世論調査機関は相当反省している。平均的な予想がクリントン候補は少なくとも2~3ポイント、場合によっては12ポイントリードしているとみていただけに、この結果に新聞社、調査機関は驚いている。今回の選挙ではマスコミの果たした役割にも責任がある。トランプ候補が昨年6月に出馬宣言してから今年の春までの間、同候補の発言をおもしろおかしく伝えるだけで、政策や仕事の中身について追求しなかった。(米テレビネットワークの)CBSの会長は今年2月に『トランプ候補は米国とっては良くないとしても、視聴率を上げるには神様だ』と言っていたように、テレビ各社は視聴率を上げるためにトランプ候補を注目した。新聞も例外なく社説でクリントン候補を支持したほどだった」と話し、トランプ候補が注目されたのはマスコミの報道の仕方にも原因があったと強調した。

 女性票を獲得できなかった理由については「女性の世代間のギャップがあった。50代以上の女性の中にはクリントン候補を熱狂的に支持するグループがある一方で、若い女性層は冷めた見方があった。女性だということで女性の大統領候補の投票しようということには反発する動きもあって、女性票を集められなかった」と指摘した。

 来年1月20日の新大統領就任式までの政権移行期間について「この期間中に4000人近くの政権幹部が交代する。そのうち閣僚、副長官、次官、次官補など千人は議会の承認が必要になる。閣僚は11月から12月までに決まり、次に副長官、次官らが来年の4、5月までに決まり、その後に大使などの人事が決まる。クリントン候補が大統領になれば、同じ民主党だからスムーズに政権移行ができるが、トランプ候補は共和党である上に、政府、ワシントンでの経験がないため新しいプロセスになる。民間からも登用するだろうし、新しい政権作りには時間が掛かり混乱することも予想される」と推測した。具体的な閣僚候補としては「クリス・クリスティ・ニュージャージー州知事、ジュリアーニ元ニューヨーク市長らが予想されている。選挙期間中に安全保障に詳しい共和党主流の議員50人がトランプ候補の政策を批判するなどしており、外交、安全保障分野でトランプ候補に近い人がいない」と述べた。


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