2024年4月26日(金)

WEDGE REPORT

2016年11月13日

 トランプ候補の政策については「キャンペーン期間中に現状に対する批判が多く、何を重点にして、どの政策を優先するか不透明だ。法人税を35%から15%に引き下げ、個人の税率も下げ、インフラ整備を行うと言っている。自由貿易を廃止し、再交渉すると言っているが、実際にやろうとすると制約があり、議会、最高裁判所、マスコミもある。貿易のことをしようとすればWTO(世界貿易機関)もある。中国に対しては75%の関税をかける、日本から米国に輸出される車に対しては、米国から日本に輸出される牛肉に課税されているのと同じ税率の38%を課税すべきだと言っているがどこまでできるかどうか」と指摘、大統領に就任して果たしてこれまでの発言通りに実行することには疑問符をつけた。

 「トランプ氏の考え方は共和党の主流派、ビジネスコミュニティとも異なる点が多くあるので、これからは議会との間で議論が相当激しくなるのではないか。トランプ氏は自由貿易に反対しているが、IBMなど米国の主要な会社は自由貿易を重視しているので、これからビジネス界は議会に対して自由貿易擁護の方向で説得する側に回るだろう。移民政策についても移民を抑制しようとするトランプ氏に対して、シリコンバレーなどは世界から優秀な人材を集める移民により成り立っているので、移民政策についても大きな議論になりそう」

 しかし、トランプ候補は1987年にニューヨーク・タイムズなど主要新聞に日本に対する批判を書いた意見広告を掲載している。その内容は「①日本は米国の雇用を奪っている、②輸出ばかりして米国製品を輸入していない、③為替を円安の方向に意図的に操作している、④安全保障のただ乗りの3点でのこの批判を一貫して行ってきている」と述べ、トランプ氏は日本に対して良い印象は持っていない見方を示した。

安倍首相にしてほしい4つの質問

 トランプ氏のこうした発言からして日米関係の先行きに懸念を感じているフクシマ氏は、トランプ次期大統領と17日に首脳会談する予定の安倍晋三首相に対して、個人的には4つの質問を是非してほしいと述べた。その一つはTPP(環太平洋連携協定)について「TPPを廃止するか、米国の有利になるよう再交渉すると言っているが、TPPの何が不満で何を修正すれば満足するのか。2番目の日米経済関係で、日本から米国に輸出する車に対して本当に38%の関税をかけるつもりなのか。3つ目は沖縄の米軍駐留に関して、日本に対してどこまで米軍駐留の経費負担を求めるのか。日本が負担しない場合は米軍を沖縄から撤退させるのか。4つ目は中国・尖閣諸島問題で、オバマ大統領が14年の訪日の際に発言した尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲と明言した米国政府の立場をトランプ政権は踏襲するのかだ。この4つの問題のトランプ氏が答えてくれれば、日米関係の行方がはっきりしてくる」と述べた。

【グレン・フクシマ】1949年生まれ。カリフォルニア州出身の日系3世。ハーバード大学ロースクール卒業。85年から90年まで日米の貿易摩擦が激化した時に米国通商代表部(USTR)で対中国・日本の通商政策を立案。エアバス・ジャパン会長などを経て、12年から米国先端政策研究所上席研究員。

  
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