2024年4月20日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2017年1月27日

新「悪の枢軸国」

 共和党候補指名争いから一貫してトランプ大統領は、「中国・メキシコ・日本」の3カ国をパッケージにして、米国内の雇用を破壊した国として繰り返し批判しています。中国は為替操作国で、ドル高是正を阻止している国として捉えているのです。北米自由貿易協定(NAFTA)を活用してグローバル企業は、人件費の安いメキシコに製造拠点を作り、そこで生産した製品を米国に輸出してきました。日本企業もメキシコに製造拠点があります。そのうえ、日本に関して言えば、同大統領は一方的に米国に製品を輸出している不公平な国としてみなしているのです。

 過去にジョージ・W・ブッシュ元大統領がテロ支援国家としてイラン、イラク及び北朝鮮を「悪の枢軸国」と名指しました。トランプ大統領の思考回路では、「中国・メキシコ・日本」は米国内の製造業破壊の悪の枢軸国になっています。

 しかも、この新「悪の枢軸国」はすべて非白人国家です。2016年米大統領選挙で筆者が戸別訪問の最中に遭遇した白人労働者や退役軍人といったトランプ信者は、不法移民や人種、民族及び宗教における文化的多様性が米国社会を破壊したと強く信じていました。トランプ大統領が「中国・メキシコ・日本」をパッケージにして叩く背景には、人種を使った支持者固めという見方も可能です。

取引材料の組み合わせ

 トランプ外交における予測可能になった点もみていきましょう。トランプ大統領は、取引材料の組み合わせを常に探しています。

 例えば、台湾と「1つの中国」政策です。中国を揺さぶるための効果的な組み合わせなのです。ロシアの核削減と制裁解除も有効な組み合わせになる可能性があります。メキシコに進出せずに国内に留まった企業と優遇措置も組み合わせに含めることができます。

 日本側にとって大きな懸念材料は、トランプ大統領が日本に対してどのような取引の組み合わせで揺さぶりをかけてくるのかです。前回の『雇用創出のための同盟国ニッポン』で説明しましたように、就任演説の行間を読みますと日本は同大統領の内政の延長線上に置かれた「同盟国」であることが明らかになりました。従って、日本に対する取引の組み合わせは、雇用創出を引き出すためのものになる可能性が高いとみて良いでしょう。


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