2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年4月28日

 「09年の経済情勢はけっして芳しくないのに、どうして不動産市場だけがこれほど繁栄しているのか」というのが、調査に乗り出す頼教授の問題意識だったが、自らの調査結果から引き出した彼なりの結論とは結局、「実体経済の状況が良くないからこそ、不動産市場が繁栄してバブルが膨らんだ」ということである。

 まず、頼教授の調査結果によれば、去年の不動産バブルを支えた購買者の約8割は住むためではなく、むしろ投資のために不動産を購入したことが分かった。

 そして、人々が不動産投資に熱中した理由も、頼教授が多くの購入者たちにヒアリングしたことによって判明した。

 「なぜ不動産投資なのか」という質問に対して、一般の個人投資者から返ってきた答えの多くはこうである。

不動産を買うのは黄金を買うのと同じ

 「物価が上がっている中で、お金を銀行に預けたままでは価値が下がっていく一方だ。不動産物件を購入すると、これからもどんどん値が上がるから資産が確実に増える。今の経済状況下では、不動産を買う以外に良い投資先があるわけでもない。不動産を買うのは黄金を買うのと同じだ」

 つまり、物価の上昇(インフレ)が進行している中で、人々にとって、不動産投資こそが資産保存・増殖のもっとも有効な手段となっていること、そして、実体経済全体の不振で他に魅力的な投資先がないことが人々を不動産投資に走らせているのである。

 そういう意味で、実体経済が芳しくないことは不動産業の「繁栄」の原因であったといえよう。そして、多くの個人投資家たちが不動産投資に参入してきた結果、去年の新規融資の多くが「住宅ローン」として不動産市場に流れたわけである。

続々参入する中小企業の元経営者たち

 新規融資が不動産市場に流れたルートは他にもある。頼教授が調査の中で気づいたもう一つ重要なことは、09年以来、大量の資金をもって不動産投資に参入してきた人々の中には、実は中小企業の「元経営者」が非常に多かった点である。彼らの多くは、08年の世界同時不況以前にはアパレルや玩具などの輸出産業で企業経営をしていたが、不況後に中国を襲った輸出不振の中で会社を畳んで業界から身を引き、企業の売却金を元手に銀行からさらに金を借りて不動産投資に参入しきたのである。

 「今のご時勢では企業経営しても損するばかり。やはり不動産投資が一番だ」と、頼教授に向かって彼らは口々にこう言うのである。

 あるいは、企業を経営する傍ら、不動産投資に熱中する経営者もいる。そういう者たちの語った不動産参入の実態も実に恐ろしい。


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